にしきたショパンの映画専門家レビュー一覧

にしきたショパン

ピアニストを目指す若き2人の姿を映し出すヒューマンドラマ。幼なじみの凛子と鍵太郎は、ピアニストを夢見る高校生。だが、阪神淡路大震災によって鍵太郎はかけがえのないものを失ってしまう。一方、ショパンに憧れる凜子は、震災直後ポーランド留学へ旅立つ。出演は、2017年ベートーヴェン国際ピアノコンクール in ASIA 第1位などコンクール入賞多数の水田汐音、モデルとしても活躍する中村拳司。竹本祥乃監督による長編デビュー作。
  • 映画評論家

    北川れい子

    これが長篇第1作という竹本監督のチャレンジ精神には敬服する。ピアニストを目指すショパン少女とラフマニノフ少年の紆余曲折。当然演奏シーンも多く、ほとんどは練習場面だが、さしずめ、眼で聴き、耳で観るような―。けれどもあれこれの障害物を盛り込んだメロドラマ仕立ての脚本と、魂に響く音と言った台詞がかみ合わず、映画としての広がりも奥行きも希薄。世に出るための手段としてのコンクールやオーディションに固執するのは分からないでもないが、全体に頭でっかち!?

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    正攻法で真面目につくられた作品で、ともすればその真面目さが食い足りなさとなるところだが、低予算ゆえの画面のつつましさや本職でない役者たちのぎこちない演技がむしろ奏功し、押しつけがましさのない素直な感動を呼び起こす。アマチュア的座組の活かし方といい、音楽の使い方といい、往時の中尾幸世を想起させる水田汐音のたたずまいといい、どこか佐々木昭一郎の作品に通じるテイストも。ラストシーンのフェイドアウト、そのタイミングと余韻が心地よい。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    阪神淡路大震災の記憶と「左手のピアニスト」をめぐる事実。語るべきことが確かにある。関係者はこれを劇映画にすることに夢を感じたのだろう。震災前後の時代感覚をも遥かにさかのぼった昔を感じさせる「まじめさ」にまず当惑するが、それにしても、なぜこんな話なのか。人物の心の動き、運命の罠にハマっているだけ。深刻顔とわざとらしい芝居はやめてピアノの力を信じなさいと言いたくなった。竹本監督、場面の空気をもっと重視すべきだ。題名にあるショパンも活かしていない。

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