さつきのマドリの映画専門家レビュー一覧

さつきのマドリ

「アルプススタンドのはしの方」の平井珠生が主演・主題歌を務めるコメディ。彼氏に突然振られてボロボロになったさつきは、道端のお地蔵様に「私を幸せにしてくれる男を見極める目をください」と懇願する。すると、男の顔が物件の間取りに見えるようになる。出演は、「街の上で」のタカハシシンノスケ、「帝一の國」の千綿勇平。監督・脚本は、「テラリウムロッカー」の葛里華。MOOSIC LAB「JOINT」2020-2021コンペティション部門出品作品。
  • 映画評論家

    北川れい子

    そういえばバブルの頃だったか、高学歴、高身長、高収入の“三高”が理想の結婚相手だと騒がれていて、高けりゃなんでもいいのか、いっそ高山植物とでも結婚しろ、とアキレていた記憶がある。ま、それに比べれば男がみな賃貸マンション物件に見えてしまう本作の主人公などカワイイものだが、話のネタはそれっきり、これっきり、映画というより長めのコントがせいぜい。しかも主人公が働く小さな不動産屋にやってくる客はなぜか男ばかり。彼女が願掛けをする路地の地蔵の表情は愉快。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    現状に充足できない主人公が、あるとき身の回りの変化を通じて、足元の「小確幸」を見つける物語、という意味では葛里華監督の前作「テラリウムロッカー」とも通じる。主人公を精一杯チャーミングに映し出している点も同様で、平井珠生の表情や動きがいちいち魅力的で可笑しい。ただ、これも前作同様、結論めいたものをはっきりセリフで言わせてしまうのはどうだろう。間取りの紙が降ってくるクライマックスなど、撮影は相当頑張っているだけに、もっと画で語らせられなかったろうか。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    不動産屋に勤めるヒロインは、仕事でも同棲相手との関係でも手痛い反発を食らいながら、自分のどこがよくないのか思いつかない。性格はよいが、考える力がないという造型になっている。演じる平井珠生も葛監督も、それなりにノッテいるようだが、この現在にこれでは「女性」をバカにしていると思う。夜の散歩に出たときの衣装がひどいと思ったら、そのあとそれをずっと着っぱなし。病的に、男の顔が物件の間取りに見えるようになる。アイディアも表現もその病いへの思考が足りない。

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