なんのちゃんの第二次世界大戦の映画専門家レビュー一覧

なんのちゃんの第二次世界大戦

新鋭・河合健が、現代人と戦争の不透明な距離感を描いた群像劇。太平洋戦争の平和記念館設立を目指す市長・清水昭雄の下に、設立中止を求める怪文書が届く。差出人は、BC級戦犯遺族の南野和子だった。和子は、ある事実を知っていると昭雄に告げるが……。出演は「大コメ騒動」の吹越満、「おらおらでひとりいぐも」の大方斐紗子。
  • 映画評論家

    北川れい子

    まったく偶然に違いないのだが、この3月公開の「コントラ」と同じ血が流れている人物の登場にびっくりしつつ嬉しくなった。平和記念館の建設に断固反対する祖母と孫娘が、「コントラ」の祖父と孫娘の関係に似ているのだ。戦争というキーワードや、土着性というか、その地域性も共通する。けれども残念なことに本作、狂言回し役を兼ねている市長(吹越満)が、あまりに薄っぺらなこと。むろんそれが狙いなのだろうが、他のキャラにしても盛りすぎ。でもでもダンコ支持!!

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    シノプシスのレベルでは興味を引くが、作り手の視線が表面的な対立図式の外側に向いていないように感じる。批評もユーモアも安直な平和運動批判(というより茶化し)のレベルでとどまってしまい、これで「現代の若者から見る戦争・政治」と謳われても困ってしまう。出演者の8割が素人や新人とのことだが、中心となる二人の人物は吹越満と大方斐紗子(さすがの存在感)というキャリアのある俳優が演じており、それもかえって人物ごとの濃淡のアンバランスを引き起こしている。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    戦争が現在にどう露出するか。麻生や安倍のような政治家が逃げ込む無反省と甘やかしに比べたら、本作の吹越満演じる市長のアガキなど、かわいいものだとなりそうだが、「平和の名のもとにいい加減なことをするな」と抗議したい山ほどあることの一例の首謀者だ。その半端さを吹越がうまく出して、ユニークな存在感をもつ南野家の女性陣の攻撃の的になる。どの人物もふくらみ不足の造型。それがかえって勢いと異化効果を生みだしているか。へんな映画。河合監督、発想に個性がある。

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