コントラ KONTORAの映画専門家レビュー一覧

コントラ KONTORA

インド出身で元アニメーターのアンシュル・チョウハンが、モノクロの映像美の中に綴った物語。父親と二人で暮らす高校生ソラは、亡き祖父が戦時中、日記の中に残した記号化された宝の存在を知る。さらに彼女は、無言で後ろ歩きをする男に遭遇するが……。出演は「タイトル、拒絶」の円井わん、舞台を中心に活動する間瀬英正。
  • 映画評論家

    北川れい子

    裸足でうしろ歩きをする男の正体は、いったい何者なのか――。といった詮索はともかくとして、土着性に歴史と個人史を巧みに盛り込み、かつ下世話なエピソードも忘れないこの作品の凄さ、素晴らしさに拍手を送りたい。ミニマムな話なのに、モノクロの広々した田園風景が窮屈さを寄せ付けず、開けっぴろげのユーモアもある。死んで不在となった祖父の分身である手帳の、書き込みと絵。宝探しが奇しくも祖父という存在の重力になっているのもスリリング。演出も俳優陣もみな満点!!

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    四方田犬彦は、近年の日本映画が現在の社会に照らし合わされるかたちで当然描くべき歴史性にあまりにも無頓着であることを度々批判しているが、巷間自明のものとされているカッコ付きの「日本映画」の外側からこうした揺さぶりをかけられると、「永遠の0」程度を戦後日本のワクチンに見立てて有難がる欺瞞的な「空気」(山本七平)がますます薄気味悪く感じられてくる。暴力性の表現、そのヴァリエーションも豊富で、なかでも円井わんの瞬発的な怒りの爆発に虚を突かれる。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    アンシュル・チョウハン監督、日本人が表現してきた「日本」の限界を突き破る自由さがある。個人的な執着と製作条件下での工夫からのファンタジー的要素だと思うが、内輪的な遊びや作りごとの退屈さとは無縁の、世界に向かう姿勢を感じた。余剰感のない白黒映像。円井わん演じるヒロインのソラがリアルな強さで躍動する。ラスト、とにかくカッコいい。理屈はどうでも、負けないということ。若松孝二や増村保造がやりたくてもできなかったことを見ている気がして、やられたと思った。

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