明日の食卓の映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
事前に入れてしまった「母親が息子を殺す」という情報が、プラスに働いた。3人の母親と、それぞれの10歳の息子「ユウ」の3本のストーリーが、不自然に絡ませられることなく同時に進んでいく。徐々に緊張感と不穏さを増していく力強さと手際の良さに巻き込まれ、誰が誰を殺したのかを観客に知らせるシーンのカット割りも巧みで鮮やか。映像の力を体感できるスリリングな力作だ。「悪魔」「サイコパス」担当の少年「ユウ」と母親の関係性の着地のさせ方は、エモに流れた印象。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
恐ろしい映画だ。家族には救いはどこにもない。ただ息が詰まるばかりだ。この映画は、そんな日本の今を象徴的に抉り出していると感じた。〈石橋ユウ〉という長男がいる三つの家族、奇しくも生活レベルは上中下。冒頭に描かれるそれぞれの家族の一見何もない平和な生活が早くも息苦しい。ユウやダメ夫や母の弟が起こす問題がむしろ風穴を開けたかのよう。希望の象徴にも思われる飛行機雲は今回の東京オリンピックの暗喩だろうか。前は五輪を描いたその雲が今はむなしく伸びている。
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映画評論家
吉田広明
同じ名前の息子を持つ三人の母親。上流家庭に入った専業主婦、仕事に復帰しようとする主婦、仕事を掛け持ちするシングルマザー。階級差、出産後の仕事復帰の困難、シングルマザーの貧困など、日本の女性が抱える問題が彼女らの描写を通して浮かび上がる構造。このうちの誰の息子が殺されるのかがサスペンスとなるが、どの子が殺されてもおかしくない、ということはどの子であったとしても映画の図に大きな変化はないと予測がついてしまい、サスペンスを大きく減じることになっている。
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