ある殺人、落葉のころにの映画専門家レビュー一覧

ある殺人、落葉のころに

初監督作「3泊4日、5時の鐘」がロッテルダム国際映画祭に出品された三澤拓哉の長編第二作。土建屋で働く幼馴染の俊、知樹、和也、英太の4人は、生まれ育った町で気ままな生活を送っていたが、恩師の死をきっかけにその友情が崩壊、ある悲劇が訪れる。出演は「町田くんの世界」の守屋光治、「ワンダーウォール 劇場版」の中崎敏、「佐々木、イン、マイマイン」の森優作、「クローゼット」の永嶋柊吾。
  • 映画評論家

    北川れい子

    小さな集団の不協和音を、語りすぎないいくつかのエピソードと、風景や様々なもののアップ映像でつなぐ演出手法は、三澤監督の前作「3泊4日、5時の鐘」と同じだが、ザワツキ感は今回の方が格段に上。ずっと時間と場所を共有してきた4人組の、微妙な力関係と曖昧な共犯意識。4人は仕事中でも遊びでもひっきりなしにタバコを吸い続ける。でも冒頭で「私は覚えている」とノートに書く若い女は何者? 若い俳優たちがみな好演、湘南風景も効果的なだけに妙な気取りが惜しまれる。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「3泊4日、5時の鐘」同様、生まれ育った茅ケ崎のまちを舞台にした三澤拓哉監督作品だが、単に慣れ親しんだ場所だからというだけでなく、この監督には空間と人物の関係をシームレスにとらえる独特のセンスがある。だから、人物が映っていない風景にも(アルミの壁や鈴でさえも!)人間の気配があり、人物のたたずまいもまた特定の風景を背負っている。若い役者たちが皆、リアルな身体性を発揮しているが、「~5時の鐘」でも出色だった堀夏子の得体の知れなさが魅力的。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    構図、画質、編集、音楽の入れ方、まずはいわゆるスタイリッシュでカッコいいと思わせるが、人物に魅力がなさすぎる。こういう若者たち、実際にいるのだとしても応対に困る。怯えとズルさで友情を変質させて狭い場所でくっつき、小さな権力を振るうか振るわれるかの違いはあれ、基本は同質の受け身。アジアの青春の惨めな例だとして、こんなアジアは蹴っとばせではないか。才能を感じさせる三澤監督。残念ながらここはインサート的映像の多用と謎めかした筋の運びに溺れたという印象。

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