めぐみへの誓いの映画専門家レビュー一覧

めぐみへの誓い

北朝鮮に拉致された被害者の苦悩と闘いを、綿密な取材に基づき描くドラマ。1977年、13歳の横田めぐみは部活帰りに工作員の手により拉致される。めぐみは日本に帰れない現実を前に精神が破綻する一方、日本では両親や支援者が奪還に向け懸命に活動を続け……。原案は、2010年から劇団夜想会の自主公演としてスタートし、2014年から内閣府拉致対策本部の主催公演として入場無料で全国各地で公演が行われている舞台劇『めぐみへの誓い―奪還―』。舞台の脚本・演出を手がける野伏翔がメガホンを取った。クラウドファンディングなど5千人以上からの支援により完成。
  • フリーライター

    須永貴子

    再現ドラマ的な印象で終わる危険を孕む題材を、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんが見る非現実的な夢の映像をクライマックスにすることで、インパクトを残すことに成功している。拉致シーンの恐ろしさも忘れがたい。とはいえ、拉致被害者の田口八重子さんと金賢姫とのエピソードが少々描かれただけでテロップで処理されているように、エピソードのパッチワークが美しくない。架空のキャラクターを媒介にするなどの工夫をして、もう少しドラマとしてエンタメ化してもよかったかも。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    拉致問題に関してかなりの下調べがなされているだろうと思わせる。実話なだけに、この現実にしっかりリアルに向き合わないといけないと観ているうちに背中を叩かれる思いがした。映画のもとになった舞台公演は全国を回って、多大な支援を得たと聞く。是が非でも映画にして、より多くの人に拉致の問題について改めて考えてもらいたいとの願いが充分作品に込められていて、力が入っている。が、終盤の夢のシーンは何なのか。事実として観ていた気持ちが途端にはぐらかされてしまう。

  • 映画評論家

    吉田広明

    北朝鮮が拉致のような非情な手段を行使する独裁国家になったことには複雑な歴史的要因、国際政治情勢があり、その絡まった結び目を解くことも解決の一つの道だろう。この映画にはその絡まり具合を明確に可視化する方途もあった筈で、心情にばかり訴えるよりその方がよほど実効性があるのでは。日本自体もアジア全体を視野に置いた粘り強い外交努力を怠っており、しかし解決を国家に委ねなければならない被害者たちは、批判も封じられている。その拘束も描く価値はあるように思う。

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