ゾッキの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
三人の監督が個性を競うオムニバスではなく、作品内のエピソードを分担しているらしい。それなのに妙な統一感があるのは、原作と、蒲郡というロケ地が強いから。撮影監督など全スタッフを固定したこともプラス。「秘密」というキーワードがあまり機能しておらず、群像劇としてのカタルシスも弱いが、音楽監督を務めたCharaの仕事により、人間讃歌としてまとまった。演者はみな魅力的。特に映画初出演となる芸人の九条ジョーの、“変さ”と“愛らしさ”の塩梅が絶妙だ。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
原作ものをやっているが、あまり知られていないものを発掘しているところにまず好感を抱く。それと監督の三人がみな俳優。しかも役者根性バリバリの人たちだ。思えば名作をものにした俳優監督は幾人もいる。伊丹十三、北野武、奥田瑛二等々。古くは山村聰や佐分利信もいる。また衣笠貞之助も藤田敏八も元々は役者だったのだ。映画の核心が芝居を撮ることだと思えば、芝居をよく知る俳優が監督をするのはとても理に適っている。いいものを観させてもらった。
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映画評論家
吉田広明
レンタル・ビデオ屋で終業時に残したメモの位置の変化が9・11を告げるなど、極小と極大がつながって、何気ない細部が人生の機微を語る。久しぶりの監督となる竹中直人、数本目の齊藤工、初監督の山田孝之、演出経験の差を感じさせない仕上がりで、齊藤、山田の今後も期待させる。ただ、挿話を切らずにつなげているとはいえ群像劇として人物が縦横に絡み合うわけでもないので、オムニバスでよく、そうすれば各演出家の力量が残酷に晒されるわけで、その方が良かったと思わなくもない。
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