すくってごらんの映画専門家レビュー一覧

すくってごらん

大谷紀子による同名漫画を「ボクは坊さん。」の真壁幸紀監督が、歌舞伎俳優の尾上松也を主演に迎え実写化。エリート銀行員の道から外れ、荒んだ気持ちを抱えて左遷の地にやってきたネガティブな男・香芝誠は、金魚すくいの店を営む吉乃に一目ぼれしてしまい……。共演は「幕が上がる」など女優としても注目を浴びる、ももいろクローバーZの百田夏菜子、「明烏 あけがらす」の柿澤勇人。
  • フリーライター

    須永貴子

    登場人物による歌のパフォーマンスにより、映画化する意味のある仕上がりに。原作の軸である「金魚(すくい)」をモチーフにしたプロダクションデザインも秀逸。着物の柄、夏祭りのポスターデザイン、金魚鉢のようなエフェクトをかけた映像処理など、細部まで仕事が丁寧。その世界観の中で、歌舞伎俳優、アイドル、劇団四季、モデルなど、出自も個性も異なるキャストが調和し、各々の枠を打ち破る。尾上松也の、確かな技術に裏打ちされたコメディの表現力にも驚かされた。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    金魚すくい? もし漫画原作がなかったら、同じようなプロットがあっても絶対に映画にはならなかっただろう。それを思うと少し悲しい。映画は映画自体の力で花開いてほしいと思い続けている。この映画は楽しい。ミュージカル風にしたのは大正解だろう。しかもその主題歌、挿入歌のほとんどの作詞を脚本家が手掛けているのがいい。観終わった後には何も残らず、すぐにこの映画を忘れてしまうだろう。が、それの何が悪いと居直って胸を張ってるような小気味良さがある。

  • 映画評論家

    吉田広明

    左遷されたエリート銀行員が田舎町で人らしい心を取り戻し、それぞれに挫折した(この挫折の物語も凡庸)町の住人たちともども、大きくなれないために露店で売られる、これまた挫折した存在たる金魚「すくい」で「救う」コメディ・ミュージカル。物語は紋切り型、捻じれたエリート意識を語るモノローグや、その心情をいちいち字幕で表すのも煩わしい。ただ、古く美しい街並み(奈良)を徹底して人工的に作り変える美術と照明、キャストの歌唱力に一見(聴)の価値はあるかもしれない。

1 - 3件表示/全3件