聖なる犯罪者の映画専門家レビュー一覧

聖なる犯罪者

第92回アカデミー賞外国映画賞にノミネートされた、実話を基にしたポーランド発の人間ドラマ。前科者は聖職に就けぬと知りながらも神父になることを夢見る青年ダニエルは、仮釈放となりふと立寄った教会で、新任の司祭と勘違いされ司祭の代わりを命じられる。監督は、「リベリオン ワルシャワ攻防戦」が2014年ポーランド興行収入No.1を記録したヤン・コマサ。主演のバルトシュ・ビィエレニアは第70回ベルリン国際映画祭にて若手俳優を紹介するシューティング・スター2020に選出された。第76回ヴェネチア国際映画祭ヴェニス・デイズ部門出品。ポーランドのアカデミー賞とされる第22回ポーランド映画賞(イーグル賞)にて監督賞、作品賞など11部門に輝く。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    閉塞空間の物語ではなく、ジャン・バルジャンばりの過去を忘却する振りの物語でもない。中心不在の宙吊りにされた村の「事件」は、本弄される主人公の「心」そのもので、神秘であると同時に限りなく凡庸だ。美しすぎる光に満ち溢れている全篇は、神はどこにでも存在するし、不在でもあると語りかける。ポーランドらしいミニマルで完成度の高い脚本とカメラワーク。劇中の登場人物にとって我々観客自体が、「神」の存在だとしたら、「神」とは我々を覗き見る不在の鑑賞者なのか。

  • フリーライター

    藤木TDC

    ポーランド人監督ヤン・コマサはDVDで見られる「リベリオン ワルシャワ大攻防戦」もNetflixの「ヘイター」もとても面白く注目すべき才能だが、本作は肩に力が入った感じ、お行儀よい映画祭向け映画でやや退屈だ。他作は派手な見せ場があるエンタメ寄り映画なので、本作をコマサ監督の標準と考えないほうがいい。実話ベースだから仕方ないが、逸脱ない展開から突如ギョッとする結末が訪れるのは、あまりにステレオタイプな脚本に対する監督の鬱憤が炸裂したようにもとれる。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    実話の映画化とはいえ、どんな職業だろうと勉強や資格などの必要な工程をすっ飛ばし、ラクして騙るのは許し難いので、そもそも設定で拒否反応が出てしまった。趣旨と異なる感想だろうが、ときに愚直さも必要かと思うので。犯罪者と神父の組み合わせが意味ありげに見えるだけで、じつのところただ短絡的な犯行に基づく出来事だ。「神父ごっこ」ができるのも、悔い改めていないから恥じずに嘘をつけるのだし、最後に主人公がカメラを真正面から見つめるしぐさも傲慢に感じる。

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