のさりの島の映画専門家レビュー一覧

のさりの島

「おくりびと」の小山薫堂がプロデューサーを務め、「カミハテ商店」の山本起也が監督した熊本・天草を舞台にしたドラマ。天草の寂れた商店街に、オレオレ詐欺の旅を続ける若い男が流れ着く。老女・艶子はその男を孫として招き入れ、奇妙な共同生活が始まる。出演は、「佐々木、イン、マイマイン」の藤原季節、本作が遺作となった「黒い画集 あるサラリーマンの証言」の原知佐子。第24回富川国際ファンタスティック映画祭ワールドファンタスティック・ブルー NETPAC Award Special Mention受賞。京都芸術大学映画学科劇場公開映画制作プロジェクト・北白川派第7弾。
  • フリーライター

    須永貴子

    流れ者の青年がオレオレ詐欺を仕掛け、文字通り老獪で食えない老婆に丸め込まれていく展開に期待値が上がったが、今と昔、若者と老人がざっくり対比されているだけで、まったく盛り上がらない。若者たちが、シャッター商店街が賑わっていた時代の映像の、上映会を企てる動機も謎。町おこし的な企画性が重視され、あちこちへの配慮がなされることで、映画にとって大切な「物語」がないがしろにされている。天草に行ってみたいとは思ったので、まんまと、ではあるが。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    題名は忘れたが、もう随分前に同種の設定のNHKのドラマを見ていたく感動した覚えがある。最近では、『おばあちゃん ありがとう』という韓国の泣けるテレビドラマもあった。おいしい設定なのか、同種のものをいくつも見聞きした。オレオレ詐欺の青年と一人暮らしの老婆。町内放送でその詐欺に気をつけろと警告しているが、住民たちは老婆の孫と称する青年に警戒心すら抱かない。過疎の町なら、人間関係は却って濃密だろうに、孫がすでに死んでいるという話すら聞いてなかったのか。

  • 映画評論家

    吉田広明

    オレオレ詐欺でやって来た男を孫として受け入れるおばあさん。案山子の顔に母親の顔を見出した人。観光の目玉として作られたマリア像。どれも「まやかし」なのだが、人にとって時にはそれも必要なのだとして映画は閉じられる。そのメッセージ自体に否はないのだが、しかしまやかしを必要とする人の心の飢えが描かれていないので、痛切なものとして感じられない。エピソード間のつながりは弱い、というか無いに等しく、何となくの雰囲気だけで話が進められており、食い足りない。

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