空に住むの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
喪失感を抱えた主人公が、惑いと迷いを経て自分を立て直す、いわゆる再生もの。本作の主人公は、両親を事故で亡くし、叔父夫婦の計らいで高級タワーマンションで新生活をスタートさせる、文芸編集者。高層階の窓からの風景と、職場の古民家とのコントラストが、彼女の心の揺れをヴィジュアルで表現している。同じマンションに暮らすスター俳優とのメロドラマ仕立てのロマンスや、赤ワインだけを飲み室内でも靴を履いているタワマン族の描写から滲む監督の意思にニヤリとしてしまう。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
高層マンションの39楷に住むというのは、この映画を観ている限り、住み心地がいいとは思えない。出版社勤めの直実が住むこの部屋を時々訪れる人気俳優は、「あなたの夢は?」と直実に聞かれて言う、「地に足をつけること」。誰も地に足をつけていないように見える。おしゃれで知的で空虚な会話。悩みや苦しみ、悲しみにもかけられたベール。観ているうちに鬱々とした気持ちになる。誰かが死ぬんではないかと思っていたら、死んだのは飼い猫だった。この映画をどう楽しんだらいいんだろう。
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映画評論家
吉田広明
人生は長い、だから人と人の関係は仮初の積りでも地獄になる事もある。その中で嘘をつくことも、相手が死んでも泣けないこともあるのだが、それでいい。綺麗ごとでは済まない人生を、その穢れのままに肯定するという話を、小奇麗な高層マンションで描くのは皮肉なのか、懐が深いのか。自分ではどうしようもない事態にいかに立ち向かうか、というより、いかにやり過ごすかという話で、昔なら意気を欠く映画と思ったかもしれないが、これも生き延びる術と思うのはこちらも年を取ったのか。
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