いとみちの映画専門家レビュー一覧

いとみち

越谷オサムの同名小説を「俳優 亀岡拓次」の横浜聡子が映画化した青春ドラマ。青森県弘前の高校に通ういとは津軽三味線が特技だが、強い津軽弁訛りと人見知りのせいで、本当の自分は誰にも見せられずにいた。そんな彼女がメイドカフェでアルバイトを始める。出演は、「朝が来る」の駒井蓮、「ミッドウェイ」の豊川悦司。
  • 映画評論家

    北川れい子

    コミュニケーションが苦手な主人公の居場所さがしというのは、いまや青春映画の定番だが、さすが横浜監督、ベースに津軽方言と津軽三味線を配し、ステップ、ホップ、そしてジャンプ!! 越谷オサムの原作は知らないが、メイドカフェでのバイトが、自分にベッタリの主人公を少しずつ変えていき、周囲の人々に向ける視線も素直になり……。祖母や地元の人たちが話す津軽方言は字幕がほしいほどだが、それが逆にこの作品の魅力になっていて、そういえば寺山修司も津軽の人。駒井蓮、いいね。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    着地点は予想がつくが、語りに工夫があり飽きさせない。場所の捉え方、下手な作り手ならご当地映画的な画作りに終始してしまうところを、柳島克己のみごとな撮影と相まって、山の風景などわかりやすくフォトジェニックな場面のみならず、空間と人物の関係そのものに物語が宿っている。最大のポイントはことばで、冒頭からラストまで全篇を支配する津軽弁、そのリズムじたいが映画の呼吸となる。親子関係の描写は、これまでの横浜聡子作品のテイストに加え、たしかな成熟も感じさせた。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    モデルがあるのだろうか。いいところある男女が働き、憎めないご主人様が来る青森のメイド喫茶に、駒井蓮演じるヒロインを踏み込ませる。気持ちの表現が苦手で、特技の津軽三味線からも逃げているいと。その性格や環境をややたどたどしいながら映画的に納得させての、展開。いとも、横浜監督も、やってくれるなあと感心した。父と娘の物語の側面をはじめ、型通りでも退屈させない駆け込み方で、三味線も活きた。生きるってそういうことだべ。けっぱれ。だれかにそう言いたくなった。

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