THE BATMAN ザ・バットマンの映画専門家レビュー一覧

THE BATMAN ザ・バットマン

「ライトハウス」のロバート・パティンソンが活動を始めたばかりのブルース・ウェイン/バットマンを演じるサスペンスアクション。意味深なメッセージを残し世の中の嘘に制裁を加える知能犯リドラーが探偵のブルースの前に現れ、ブルースは次の標的にされる。DCコミックス原作ではあるが、DCエクステンデッド・ユニバースには属しておらず、バットマン単独の作品となっている。「猿の惑星:新世紀」「猿の惑星:聖戦記」のマット・リーヴス監督が、人間の本性が剥き出しになっていく姿を活写。連続殺人犯のリドラーを「ラブ&マーシー 終わらないメロディー」のポール・ダノが、キャットウーマンを「レゴバットマン ザ・ムービー」でも同役の声を担当したゾーイ・クラヴィッツが演じる。
  • 映画評論家

    上島春彦

    レトロ・フューチャーな美術デザインが本シリーズ最大の見所。今回は現代絵画の古典エドワード・ホッパーの「ナイトホークス」を彷彿させる光景がさすが。メカの手作り感と脱げそうなマスクのへなへな感もキュートでいい。また日本映画「予告犯」のSNS動画とか「天国と地獄」のクライマックスを意識している場面もある。だからお得感は認めたいが、せっかくリドラーを登場させシャレを利かせたつもりの話が大してシャレてない。政治家や篤志家の偽善を暴きましたってだけじゃあ。

  • 映画執筆家

    児玉美月

    フィルム・ノワールの雰囲気を漂わせながらとにかく暗さを基調としたオーセンティックな世界観に没入できる。ただバートン版もノーラン版もそれぞれジャック・ニコルソンとヒース・レジャー演ずる悪役が鮮烈さを携えていたところに大いに魅力があったため、「ザ・バットマン」はそこを期待していたら物足りなさが残る。字義通りの意味で強い女性が落下しかける男性を引き上げる描写が一つの山場にあたるのは直近の「マトリックス レザレクションズ」等にも共通するフェミニズム的要素。

  • 映画監督

    宮崎大祐

    ティム・バートンが構築した美学とクリストファー・ノーランが確立した哲学を天才マット・リーヴスがどう料理するのかを楽しみにしていたものの、冒頭からどうもアクションが連鎖していかない。CGの猿すらグルーヴさせた彼が、である。暗いシングル・ショットばかりで距離を見せるショットが乏しく、サスペンスが効かない。ノーラン版のマチズモに抵抗したのであろうブルース・ウェインの造形も自閉していていまいち乗れなかったが、靴音とバットモービルの排気音には萌えた。

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