ストレイ・ドッグ(2018)の映画専門家レビュー一覧

ストレイ・ドッグ(2018)

ニコール・キッドマンが初の刑事役に挑んだネオ・ノワール。ロサンゼルス市警の女刑事エリンの元に届いた一通の封筒。それは17年前、FBI捜査官クリスと共に犯罪組織への潜入捜査を行った際、ある過ちを犯し取り逃がしてしまった組織のボスからの挑戦状だった。共演は「ワイルド・ストーム」のトビー・ケベル、「ボストン・ストロング ダメな僕だから英雄になれた」のタチアナ・マズラニー、「アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル」のセバスチャン・スタン。監督は「インビテーション」のカリン・クサマ。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    ニコールのここまでの汚れ役「ペーパーボーイ?真夏の引力」以来か。日系監督のクサマの素晴らしい演出は、脚本段階から練り上げられた。ウィリアム・エグルストンやフレッド・ヘルツォークなど一級の写真家の影響が、色濃い撮影。風景や皮膚の肌理によって物語を雄弁に語り尽くそうとする映像。もはやクサマの映像哲学の結晶、集大成とも言える傑作だ。原因(ドキュメント)と結果(痕跡)との因果関係が映像の本質だとすると、映像と記憶を犯罪によって縫合していったようだ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    今はなき銀座シネパトスでの上映が似合うB級アウトロー刑事もの。ところが主役は女性、ウィレム・デフォー風に老けメイクしたN・キッドマンがアル中の女刑事役で驚愕のヨゴレ演技。70年代ハードボイルドの無頼な雰囲気が濃く、ジェンダーレス時代を象徴する警察映画としてジャンルのファンは観る価値が充分ある。ただ、私の好みではあと20分カットし100分弱で終了が望ましかった。終盤、流れがダラダラしてイーストウッドの映画みたいに説教くさくなり★ひとつ減らした。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    N・キッドマンが刑事役を演じてこなかったのは、美貌が無駄な意味を持ってしまうからだと、険のある顔立ちになった特殊メイクで気づく。色気が必要とされない演技の切迫感に引き込まれ、主人公の幼少時にまつわる駆け足な説明も許せる。のの字を描くような巧みなストーリー展開と、細緻な編集でちりばめられた重要なショットの回収を、観客に委ねたミステリー構造にも虚を突かれた。撮影の苦いような侘しい陽光の効果も大きい。ニューシネマの再来といった感触だ。

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