THE CAVE サッカー少年救出までの18日間の映画専門家レビュー一覧

THE CAVE サッカー少年救出までの18日間

2018年に起きた遭難事故と決死の救出劇を映画化。タイのチェンライ。少年サッカーチームの12人とコーチが、豪雨で洞窟に取り残され、9日後に発見される。タイムリミットが迫る中、世界中から集まったケイブ・ダイバーたちによる救出作戦が始まる。メガホンを取ったのは、バンコク出身のイギリス人映画監督トム・ウォーラー。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    近過去の事件の映像化、エンドロールではお約束のご本人登場という、クリント・イーストウッド級の飛び抜けた演出能力がないと標準以上の作品にはなり得ないのに、近年ずっと流行っているフォーマットの作品がまた一つ。バンコク出身イギリス人監督トム・ウォーラーによるハリウッド的なカメラワークや編集のおかげでテレビ番組の再現ドラマの域は脱しているものの、結末を知る観客にとって、登場人物が出入りし続けるこの単調な構成では、物語のカタルシスは生まれようがない。

  • ライター

    石村加奈

    目的は18年6月23日、タイの洞窟に閉じ込められた13人の少年たちの救助。その結果についても周知の救出劇の映画化で、バンコク出身のウォーラー監督は何を見せようとしたのか? タイ警察や米軍、世界中から駆けつけたケイブ・ダイバー、炊き出しなどを手伝う地元住民らが一丸となった現場の混沌がドキュメント・タッチで描かれる。タイの首相にビザの相談を持ちかけるシーンなど、現場で派生したであろう、妙な生々しさも“生きてこそ”の力強さとして、好感の持てる妙味がある。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    タイトルそのまま、2年前世界中で話題になったタイでの洞窟遭難事故の映画化。ディテールを作り込み当時の現場をドキュメントと見紛うレベルで再現、P・グリーングラス作品を彷彿させる全篇手持ちカメラと細かいカット繋ぎで描くが、状況説明がほぼ会話なのと、主要な役が素人(前半活躍するポンプ業者、後半の救出に向かうアイルランド人ダイバーなどは、本人が当時の自分を演じている)というリアルの追求が良くも悪くも緊迫感を削いでしまい、救出劇のカタルシスに欠ける。

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