瞽女 GOZEの映画専門家レビュー一覧

瞽女 GOZE

最後の瞽女(盲目の女旅芸人)といわれた小林ハルの苛酷な人生を映画化。生後3ヶ月で失明したハルは7歳で瞽女になり、8歳のときに初めて巡業の旅に出る。だがその年、病が悪化して母トメが他界。ハルは鬼の様に厳しく躾けられた母に涙一つ流すことはなかった。出演はTV『グランパ2』の川北のん、「罪の余白」の吉本実憂、「小さな恋のうた」の中島ひろ子。監督は「少女戦士伝シオン」の瀧澤正治。2020年8月8日より新潟県先行公開。
  • 映画評論家

    北川れい子

    水上勉原作の「はなれ瞽女おりん」で“瞽女”と出会ったこちらとしては、実在した瞽女さんをモデルにしたという本作、彼女の一代記に終わっているのがものたりない。前半は、盲目の幼い娘が自立できるようにと心を鬼にして瞽女修行に出す母親の心情が、後半は親方と巡業の旅に出る若い主人公のエピソードになるが、格別に時代や因習が絡んでいるわけでもない。野や雪山を往く瞽女たちの姿を絵葉書化した映像も逆に安っぽい。子役・川北のんの『おしん』もどきと成人後の吉本実憂は健闘賞。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    小林ハルの幼少時代を演じた川北のん、成長してからの吉本実憂、いずれもみごと。表情にも所作にも嘘がなく、この時代を生きた女性のたたずまいをいまに伝える。ほかにも中島ひろ子、宮下順子、草村礼子、左時枝、渡辺美佐子、さらには語り部の奈良岡朋子まで、女性陣の自然な存在感と口跡に感嘆した。豊かな黒の使い分けで時代の色を再現した撮影、峠越えのシーンはじめロケーションも圧巻だが、その画にここぞとばかり「感動的」な音楽をかぶせるのはいただけない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    最後の最後に小林ハルさん、九〇歳のときの歌声が流れる。天まで響くとは、これを言うのだと思う。地を這うようにして修練を積み重ねた末に身につけたその芸と人柄のよさ。彼女がどう育ち、どう努力してそういう人となったのか。瀧澤監督を本作へと突き動かしたものはよくわかる。瞽女になる。その大変さとそれだけでは片付けられない側面。ハルさんの歌がそうであるような、突き抜けた表現に至らないとはいえ、幼い時期の川北のん、青春期以降の吉本実憂、ともに共感を呼ぶ演技だ。

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