アウェイデイズの映画専門家レビュー一覧

アウェイデイズ

サッカーから派生した英国ユースカルチャー、カジュアルズの黎明期を背景にした青春ドラマ。1979年、給料をサッカーや音楽につぎ込むカーティは、ライブでギャング集団の一員であるエルヴィスと出会う。二人の間には誰も邪魔できない友情が芽生えるが……。毎週末にサッカースタジアムに通う英国労働者階級のファッションをFootball Casualと呼び、Casuals(カジュアルズ)がフーリガンの別称として用いられることもある。ケヴィン・サンプソンの小説を基に、ポストパンク時代の若者たちのエナジーを「サリー 死霊と戯れる少女」のパット・ホールデンが活写。製作から11年の時を経て日本で劇場公開。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    おそらく配給のSPACE SHOWER FILMSに英国北部ユースカルチャーの好事家がいるのだろう。70年代前半のクラブカルチャーを描いた昨年公開の「ノーザン・ソウル」に続いて掘り出された本作は、70年代後半のフーリガンライフを描いた一篇。08年製作と微妙に古い作品ではあるが、ノスタルジーに溺れることなく、ちゃんと一度突き放した上で、基本的にロクでもないフーリガンの集団心理と、ポストパンクに共振する少年たちの鬱屈を描いている。作劇面では、音楽の力に頼りすぎだが。

  • ライター

    石村加奈

    なつかしい作風だと感じていたら(ゴッドン役のスティーヴン・グレアムが若くて、驚いた)、11年前のイギリス映画だった。エンドロール曲〈Insight〉のJoy Divisionはじめ劇中で流れる音楽が、シーンに奥行きをもたらす。出会って間もないエルヴィスとカーティが海辺で話すシーンの〈Just for a Moment〉(Ultravox)が印象的。少年たちの閉塞感とは対照的な「空は広い」というみずみずしい台詞と呼応している。主人公カーティを演じたニッキー・ベルは岡田健史に似た色気あり。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    79年マージーサイド、フーリガンのオシャレ版(?)〈カジュアルズ〉の世界を舞台にした青春譚だが、どの時代、どの地域でも、地元の“族”は、多くの孤独な男子が初めて関わる家族以上に深い関係のコミュニティで、大半は共有する暴力だけで繋がっている。本作は、それに違和感を抱くメンバーのエルヴィスと族への憧れを持つカーティス、音楽で繋がった二人を軸に、暴力と性にまみれたホモソーシャルな愛憎関係を描いている。そのディテールが生み出す痛み、焦燥感は本物だった。

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