ザ・バンド かつて僕らは兄弟だったの映画専門家レビュー一覧

ザ・バンド かつて僕らは兄弟だった

    ロックバンド『ザ・バンド』の軌跡を辿るドキュメンタリー。ギターのロビー・ロバートソンによる自伝を基に、当時の映像やエリック・クラプトンらのインタビューを交えながら、バンドの誕生からメンバー達の友情と軋轢、1976年の伝説的解散ライブまでを追う。映画監督のマーティン・スコセッシやロン・ハワードが製作総指揮として参加。
    • 映画・音楽ジャーナリスト

      宇野維正

      今なお絶大な影響力を誇りながら、活動期間は1967年から76年と実は10年にも満たないザ・バンド。その片鱗をリアルタイムで実感したのは、ロビー・ロバートソンのソロ作が初めてだったような自分の世代としては、作られただけでもありがたい作品。あくまでもロバートソンの視点から語られる構成なので、少々フェアさに欠けるところもあるだろうが。「ザ・バンドのすごいところは、天才的なシンガーが同じバンドに3人もいたこと」というスプリングスティーンの発言は目から鱗。

    • ライター

      石村加奈

      副題の「かつて僕らは兄弟だった」という過去形の重みに、胸が痛んだ。ザ・バンドのなつかしいメロディに乗せて「いまは、もう兄弟じゃない」と歌われると、人生に“再び”はないのだという当たり前のことが、わがことのように感じられてセンチメンタルな気分に。スコセッシ監督のドキュメンタリー「ラスト・ワルツ」でも有名な解散コンサートでリヴォンが歌う〈オールド・ディキシー・ダウン〉から、エンドロールの〈オフェリア〉への運びにロビーの愛を感じて、グッときた。

    • 映像ディレクター/映画監督

      佐々木誠

      「ザ・バンド」をリーダーのロビーとその他4人という構造で描くドキュメンタリーだが、「ラスト・ワルツ」を監督したスコセッシが製作(と出演)で関わっているからか、固い絆で結ばれた男たちの栄光と終焉の物語としても捉えられる。監督は弱冠24歳、スピード感ある編集で、ディラン、クラプトン、ハリスンら超大物の証言を交え自分が生まれる遥か昔の「歴史」を立体化すると同時に“同年代”の視点で「若者の青春」を等身大に綴っていく。ただ、良くも悪くも美しすぎた感はある。

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