テロルンとルンルンの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
孤独を抱える青年と女子高生が、薄汚れた窓越しに出会い、それぞれの一歩を踏み出すまでを描くボーイミーツガールもの。青年が引きこもるガレージの“聖域”感を作り出した美術を筆頭に、スタッフワークのクオリティがもれなく高い。少女が青年に修理を頼んだ猿の玩具が、部品が手に入らないために修理ができないという展開に、彼らの欠落感や苛立ちが重なる。CM出身の監督にありがちな、パッケージは整っているが中身の薄い作品とは違い、骨太かつ普遍的。長篇が楽しみだ。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
最近は日本映画を観ると気が滅入ることが多かったが、この映画には光を見た。花火事故で父親を亡くしてテロリスト呼ばわりされている青年と聴覚障害の孤独な少女との心の交流。二人はそれぞれ社会からの心醜い攻撃にさらされている。が、二人を結びつけるものはそれを跳ね除けるほど強く、愛らしい。ゼンマイ仕掛けの猿の玩具は、まるで二人を模したかのようだ。彼女のたった一つのセリフ!! 一時間足らずの長さだし、お金だってかけてないが、まさに映画なのだ。
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映画評論家
吉田広明
父親が起こした死亡事故のせいで引きこもりになった修理屋の青年と、難聴でいじめられ、心を閉ざした少女が出会い、周囲の無理解に打ちひしがれながらも、一歩を踏み出す物語。尺が短いだけあって、いじめっ子女子や、娘と青年の関係を誤解する娘の母などの造形が一面的で通俗的なものにとどまっている。直せないはずの玩具が直っていたり、青年が携帯電話を持っていたり、またその電話番号を何故か少女が知っていたり、語らずに想像させるのだとしても若干違和感がある細部が多い。
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