パピチャ 未来へのランウェイの映画専門家レビュー一覧

パピチャ 未来へのランウェイ

1991年に始まったアルジェリア内戦を背景に、イスラム原理主義による女性弾圧を描いた青春ドラマ。ネジュマはファッションデザイナーを目指しているが、イスラム原理主義が台頭し、ヒジャブ着用の強制など横暴が加速。強制に屈しまいとする彼女を悲劇が襲う。タイトルのPAPICHA(パピチャ)とは、アルジェリアのスラングで、愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性を指す。アルジェリアに17歳まで暮らしたムニア・メドゥール監督の経験から、本作が生まれた。第45回セザール賞新人監督賞(ムニア・メドゥール)・有望若手女優賞(リナ・クードリ)受賞。第72回カンヌ国際映画祭・ある視点部門正式出品作品。第92回アカデミー賞国際長編映画賞アルジェリア代表作品。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    国家や政治、古い仕来り、慣習は男性原理が産んできたものだとすると、この作品で描かれる感性は完全に女性性に属する。そして「映像に残す」という行為が政治に利用されやすい特性を考えると、それは男性性に属しやすいものと言える。このように本来「映像に残されない」ような若い女子たちの熱く瑞々しい情熱や挫折の一連の映像は、男性社会は無視をするかもしれない。それほどこのような映像作品は古い社会には破壊力を持ち得るということになる。未熟だがその熱が伝わる。

  • フリーライター

    藤木TDC

    激しい映画でとても良い。冒頭、テクノトロニックの曲が流れた瞬間にエッ!? と引き込まれた。懐かしさではなく、1990年のアルジェリアにディスコがあり、おやじギャルみたいな女性たちが集まっていたとは想像もしなかったからだ。イスラム社会の男性優位に反発し小さな夢をかなえるような生易しい話ではなく、激動する政治体制の下、世俗系女子大生が原理主義武装集団に命がけで抵抗する。意外性を連続させ知られざる歴史を強烈に伝えようとする監督の意欲と構成力に驚く。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    夜遊びで?剌とする娘たちと、ヒジャブを強要するイスラム原理主義が共存する世界は実のところ、日本をはじめ世界的に女性を取り囲む問題だ。痴漢に遭わないよう夜道は歩くな、男性を刺激する服を着たら自己責任といわれる先にヒジャブがある。女性監督らしく生き生きとした女たちの遊びの時間と、それゆえに耐えがたいであろう性差別に基づく圧迫が喉元に迫る。女にも内在するミソジニーの恐ろしさや、絵空事ではないから簡単には貫徹できない主張の演出も生々しい。

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