夏への扉 キミのいる未来への映画専門家レビュー一覧

夏への扉 キミのいる未来へ

1965年にアメリカで発表されたロバート・A・ハインライン原作の小説を、舞台を日本に置き換え初映画化。1995年、将来を期待される科学者だった宗一郎は、罠にはめられ、研究も会社も奪われ、冷凍睡眠させられる。彼が目覚めると、2025年だった。出演は、「キングダム」の山﨑賢人、「宇宙でいちばんあかるい屋根」の清原果耶、「映画 ホタルノヒカリ」の藤木直人。監督は、「フォルトゥナの瞳」の三木孝浩。
  • 映画評論家

    北川れい子

    SF作家ハインラインの原作は大昔に面白く読んだが、その映画化の本作、ロボット、コ―ルドスリ―プ、プラズマ蓄電池、時間転移装置などの科学的な仕掛けが、離れ離れになってしまった恋人たちが再会するための小道具でしかないのが話を小さくしてもの足りない。裏切り者の罠に掛かって30年も眠らされた主人公が目覚めたのが2025年、中途半端に近すぎてサスペンスに浸れない。脚本も演出も全体に及び腰? 一番心に残ったのは原作でも印象的だった猫ピートのエピソード。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    ハインラインを意識したタイトルか、と思ったら、まさかの映画化。大林版「時をかける少女」を原体験とする三木監督だけあって、観ているあいだ、さまざまなジュブナイルの記憶がフラッシュバックした。しかし、たとえばリチャード・カーティスの「アバウト・タイム」のような知的洞察を期待して観ると、単にハインライン原作の枠組みを借りたジュブナイル的意匠の模倣にとどまってしまった感が否めない。シチュエーション、俳優の身体性、もう少し生かせなかったろうか。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    ハインラインの原作は骨董品の部類だが、新訳が出たりもしてファン意識をかきたてる要素はあるのだろう。それを最近の日本を舞台に書きなおす。脚本の菅野友恵と三木監督は挑戦しがいがあると感じたにちがいない。しかし、冷凍睡眠と時間転移装置で一九九五年と二〇二五年を行き来する科学者の主人公宗一郎は、個人的に救いたいものがあるという動機以上の、私たちの生きる現実と科学への問いをもたない。未来で再会しようとする「キミ」への愛も、原作にある歪みを払拭していない。

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