ブルータル・ジャスティスの映画専門家レビュー一覧

ブルータル・ジャスティス

第75回ヴェネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門に正式出品されたバイオレンス・アクション。強引な逮捕が原因で停職処分になったベテラン刑事のブレットと相棒トニー。家族のために大金が必要なブレットは、犯罪組織の金の強奪を計画する。監督は、「デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人」のS・クレイグ・ザーラー。出演は、「エクスペンダブルズ3 ワールドミッション」のメル・ギブソン、「ハクソー・リッジ」のヴィンス・ヴォーン、「ハリエット」のトリー・キトルズ、「スポーン」のマイケル・ジェイ・ホワイト、「デンジャラス・プリズン 牢獄の処刑人」のジェニファー・カーペンター、「アメリカン・アニマルズ」のウド・キアー、「タクシー運転手 約束は海を越えて」のトーマス・クレッチマン、「ジャンゴ 繋がれざる者」のドン・ジョンソン。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    劇中から無自覚な「政治的誤り」が漏れ出ている作品は批判を免れない昨今だが、本作ほど腰が据わった反動性に対しては、観る側が居住まいを正す必要があるだろう。ユーモアや共感性を排除して、敢えて人種的ステレオタイプを踏み抜き、ノワールやピカレスクロマンの美学に溺れることなく、ひたすらリアリズムに奉仕する長回し主体の159分。S・クレイグ・ザラーが反抗しているのは時流に対してだけではなく、現代アメリカ映画の「スピード」そのものであることがわかる。

  • ライター

    石村加奈

    チラシに書かれた「肉フックに吊られたような緊張感」という言葉に引っかかりながら観始めたが、警察組織の正義に絶望した、万年ヒラ刑事・ブレット(メル・ギブソン)の拳銃を手放せない弱さも、漁夫の利を得たヘンリー(トリー・キトルズ)のラストシーンも、二人を繋ぐライオンの暗喩も、どこかで見たことのある描写だ。目的のためなら内臓をえぐり出すのも厭わぬ犯罪者のやり口をはじめ単純に暴力的なシーンが多い中、ブレットの相棒(ヴィンス・ヴォーン)の最期が恰好いい。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    やたら確率を気にするメル・ギブソン、何かあると「アンチョビ」と呟くヴィンス・ヴォーンの停職中の刑事コンビ。世渡りがうまい上司はドン・ジョンソンで、昔はメルの相棒だったという設定が泣ける。登場人物それぞれの日常の断片、繰り返される意味のない会話、脇役ですらないキャラの背景、それら「素材」を荒々しく繋ぎ、劇伴も全くない。その構造はまるで無骨なドキュメンタリー映画のようでグッとくる。最後まで妙なズレ方をしていて、その脱カタルシスが心地良い。

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