LETO レトの映画専門家レビュー一覧

LETO レト

第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され、カンヌ・サウンドトラック賞最優秀作曲家賞を受賞した青春ドラマ。80年代初頭の旧ソ連。禁じられていた西側の影響を受けたバンドのリーダーであるマイクは、才能ある若者ヴィクトルと出会う。出演は、「殺されたミンジュ」のユ・テオ、「T-34 レジェンド・オブ・ウォー」のイリーナ・ストラシェンバウム、ロックバンド、Zveriのヴォーカル兼ギタリストのローマン・ビールィク。監督は、「The Student」がカンヌ国際映画祭ある視点部門に選出され、フランソワ・シャレ賞を受賞したキリル・セレブレンニコフ。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    序盤の海辺のシーンをはじめとするモノクロの美しいショットの数々、突然ミュージカルのように歌い出すシーンの喧しいエフェクト。主要なレファレンスがヌーヴェルヴァーグの諸作品にあることは疑いようがないが、それが上手くいってるところと調子っぱずれなところの落差も含め、抗しがたい魅力を湛えた一作。監督にとって切実な「ソビエト連邦時代のバンドシーン」という題材は、元“洋楽”先進国の恩恵をたっぷり受けてきた世代としてはナイーブ過ぎて共感を抱きようがないが。

  • ライター

    石村加奈

    80年代前半、ロシアン・ロックスターの世代交代を鮮烈に描いた青春映画。冒頭の海辺で流れるズーパークの〈LETO〉とキノのエンドロール曲を聴き比べるだけでも新しい波を感じずにはいられない、洗練されたセットリストだ。愛する妻の、かわいい後輩ヴィクトルへの恋心を知り、家に帰れなくなった(三角関係的にはいちばん分の悪い)マイクが音楽仲間と新しい朝を迎えるシーンで流れるのがキノの〈My Mood〉とは憎い演出である。T・レックスやイギー・ポップらの選曲も面白い。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    80年代前半、後に伝説となる「キノ」のボーカル、ツォイと仲間の関係性を中心に、当時のソ連で“ロックをやる”ことのリアルを描き出す。全篇モノクロだが、劇中カメラで撮られた彼らの姿は、実際にそれぞれが見た風景かのようにカラーで映し出されたり、リアルなシーンに落書きを加えたような非現実的な描写、展開が挿入されるなど(必ず「これはフィクション」と注釈が入る実直さ)、彼らの内なる熱狂を巧みに表現。関係性の終わりと始まりが交差するラストシーンも秀逸。

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