ヤクザと家族 The Familyの映画専門家レビュー一覧

ヤクザと家族 The Family

「新聞記者」の藤井道人監督、「日本で一番悪い奴ら」の綾野剛主演によるヒューマンストーリー。その日暮らしの生活を送っている時に、柴咲組組長の危機を救ったことからヤクザの世界へ足を踏み入れた男・山本。だが時は移り、彼にも愛する自分の家族ができる。共演は「終わった人」の舘ひろし、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の尾野真千子。
  • フリーライター

    須永貴子

    冒頭の23分間で、なぜ主人公がヤクザになったのかを一気に描く。題字を挟んで6年後、全身に立派な墨を入れた主人公が、銭湯の湯船に入る姿を背後から捉える。この24分間の強烈な先制パンチで観客を圧倒する。抗争シーンで、ここぞという瞬間に主人公の視点になる、臨場感のあるカメラワークも気付け薬のように効いてくる。主人公と組長の親子のような関係だけでなく、「ヤクザと家族」の話が重層的に描かれていき、主人公の人生がファーストシーンをなぞる形で帰結。大傑作。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    「義理と人情」という言葉が出てくる。高倉健らがやってきた東映任?映画のメインテーマだ。「仁義なき戦い」が吹っ飛ばしたが、それを復権しようとした試み、でもなさそう。「シャブは御法度」という極道の王道を行く組は、仲間を殺した敵対の組に対しては当然仕返しをしてきっちりケジメをつける。主人公をはじめ組長も兄貴も敵対組のワルたちもみなステレオタイプ。「任?映画」はそれでなくてはならないのだろう。そのヤクザたちが滅びていく様が哀しい。が、スクエア過ぎて味がない。

  • 映画評論家

    吉田広明

    組長に父親を見出し、抗争で長い刑期を終えて出てきた男が、知らぬ間に家族ができていたことを知り、足を洗ってやり直そうとするものの世間に阻まれる。こうした筋自体はそう珍しくはないだろうが、ヤクザの人権や、反社という形での異物排除の風潮に焦点を当てたところが現在に即している。何もヤクザを弁護するわけではないが、人間社会から悪が消えない限り、ヤクザもなくなりはしないだろうし、その対処が排除=差別でいいのかとは思う。「ヤクザと憲法」のドラマ版。

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