チィファの手紙の映画専門家レビュー一覧

チィファの手紙

岩井俊二監督作品「ラストレター」の舞台を中国に移し、監督自らメガホンをとった一作。死んだ姉チィナンの代わりに同窓会に出かけ、そのことを伝えようとした妹チィファだったが、姉に間違えられてしまう。同窓会にはチィファが憧れていたチャンも来ていた。出演は、「更年期的な彼女」のジョウ・シュン、「長江 愛の詩」のチン・ハオ、「フライト・キャプテン 高度1万メートル、奇跡の実話」のドゥー・ジアン。プロデューサーは、「ラブソング」のピーター・チャン。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    脚本も手掛けた監督が間髪入れず、異なる国でセリフまで全く同じの映画を二本撮ったなんて前代未聞。これは単体で鑑賞するのではなく、やはり両翼、鏡像として見るべきだろう。全く同じ様な出来事や体験が別の世界でも起きているかもしれないという事実。これは可能性のある現象である。昔、ロンドンのクラブをハシゴした際に、日本のドラァグクイーンたちとほぼ同じ立場のクイーンたちがいて驚いた。その中にはロンドンの「ヴィヴィアン佐藤」もいたのである! 世界はパラレルだ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    「ラストレター」と同じ脚本の中国版なので、日本版を見ていないか、比較に意味を感じるなら見る選択はあり。中国版は映像の陰影が深く日本版と味わいが違う。また俳優が抑えた演技をしていて、アイドル俳優がテレビドラマ調の演技をする日本映画が苦手な人にも向く。善良な美男美女のナイーヴ純愛劇を私のような縁のないハゲ中年がディスると全て嫉みと思われそうだが、男性主人公の一女性への長年の執着には違和感を禁じ得えない。私が映画と同じ挙動をしても許されるだろうか?

  • 映画評論家

    真魚八重子

    軽やかな演出や映像でありながら、端々に重く暗い影がチラチラよぎるという、極端なバランスで均衡を保つ作品。モラハラや一生引きずる失恋、大事なものとして扱われる古い手紙が呪縛のように登場し、そういう岩井俊二らしい偏執的なモチーフがくすぶりつつも、やはり透明感には魅了されてしまう。相変わらず少女がフィーチャーされるが、男性二人の話し合いや少年の喪失感を描いたシークエンスが絶対的に面白いので、少女以外の手段を使い男性の世界を撮ってほしいと思う。

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