劇場版 きのう何食べた?の映画専門家レビュー一覧

劇場版 きのう何食べた?

よしながふみによる人気漫画を西島秀俊・内野聖陽のW主演でドラマ化した『きのう何食べた?』の劇場版。法律事務所で働く史朗とその恋人で美容師の賢二は同居中。賢二の誕生日に京都旅行に出かけた2人だったが、旅行中に賢二は史朗からある話を切り出される。山本耕史、磯村勇斗、マキタスポーツ、高泉淳子といったレギュラー陣がTV版に続き出演するほか、新キャストとして松村北斗(SixTONES)が参加。監督は「嘘を愛する女」の中江和仁。
  • 映画・音楽ジャーナリスト

    宇野維正

    テレビシリーズ『マスター・オブ・ゼロ』の傑作回「サンクスギビング」にも通じる「ゲイカップルにとっての実家問題」に真正面から誠実に取り組みつつ、レシピ映画や京都観光映画としての機能性も兼ね備えているという、何気に現在の国内娯楽映画のジャンルでは最もグローバルなランゲージで語られている作品かもしれない。ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』でも存分に発揮されていた中江和仁の堅実かつ洒脱な演出も、テレビドラマと映画の壁を軽やかに乗り越えている。

  • 映画評論家

    北川れい子

    映画を観ながらインパクトのある台詞や場面のメモをとることがあるが、本作でも何度かメモを。但し全部、食べ物絡み。例えばリンゴのキャラメル煮の作り方やブリ大根の炊き方。まだ実際に試してはいないが、劇中で西島秀俊が作る料理は本当に美味しそうで、テレビの料理番組顔負けの分かり易さ。だからか、愛し合う男性同士の小さな誤解やさやかな不安も、万事大ごとにはならず、美味しいものを食べて世はことも無し。それにしても私はこの映画の何を観たのだろうか。反省だ。

  • 映画文筆系フリーライター退役映写技師

    千浦僚

    馴染みの客層を頼りにしてしまうということが多くのドラマの劇場版映画の緊張感のなさであり、本作もそのように始まる。だが同じスタッフ、キャストで続けられた練り上げは原作を超える肉付けを生み出し、主題上の別の緊張を再発見した。どうせ俺みたいなものは、と言って控訴を断念するホームレスの被差別意識に密やかに西島秀俊氏が同調してしまうワンカットなどは映画オリジナルだし、主人公ふたりの暮らしはもはや同性婚が制度化されてないことに対するゲリラ戦に見えた。

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