君が世界のはじまりの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
「おいしい家族」では監督の熱い想いが空回りしてしまっていたが、今回は他者が脚本化した自身の原作を監督したことで、伝えたいことの対象化に成功している。正直、たった一作でこんなにも成長できることに驚かされた。空気が動く一目惚れの瞬間、給水塔を見上げるショット、夜中のショッピングモールなど、青春映画で使い古された記号をギリギリのところでダサ可愛く仕上げていて好感。切ない矢印を向け合うアンサンブルを奏でていた、メインの若手俳優は全員満点。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
「世界」とか「奇跡」とかがつく題名には眉に唾をつけたくなるが、これは違う。失礼なのを承知で言うと、前作と同じ人が撮ったとは思えない。原作は監督ご本人。その小説はすばる文学賞を獲得した。もやもやした苛立ちになんとか折り合いをつけようとしている大阪の高校生たちの姿がどんどん眩しくなってくる。脚本に向井康介氏を迎えたことが大きいと思いたい。が、ブルーハーツをモチーフにした向井氏の「リンダ リンダ リンダ」からさらに一歩踏み出している。
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映画評論家
吉田広明
高校生が父親を殺すという事件が冒頭であり、そこから高校生の群像劇が語りだされ、それぞれが何らかの屈託を抱え、感情のすれ違いで関係がこじれたりしているので、この中の誰が、がサスペンスとなる。廃講堂やショッピングモールの駐車場の階段、工場のタンクなど印象的な空間で繰り広げられる感情の劇は、深夜に忍び込んだショッピングモールで爆発する。しかしそれぞれの屈託が、深刻ぶる割にその内実が曖昧で真摯に見えず、いい気なものだな、くらいにしか思えない。
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