追龍 ついりゅうの映画専門家レビュー一覧

追龍 ついりゅう

「イップ・マン」シリーズのドニー・イェンと「グレート・アドベンチャー」のアンディ・ラウが共演、香港警察と黒社会の関係を活写した実録犯罪ドラマ。1960年代。警察署長ロックに助けられたホーは、黒社会でのし上がり、ロックと友情を結んでいくが……。監督は、「ゴッド・ギャンブラー」シリーズのバリー・ウォンと、「コールド・ウォー」シリーズや「ラスト・シャンハイ」など数々の作品の撮影を手がけてきたジェイソン・クワン。汚職が蔓延し黒社会と繋がっている警察が市民を恐怖に陥れていた時代に実在した黒社会(香港マフィア)のボス、ン・シックホーと警察署長ルイ・ロックをモデルにしている。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    香港が揺れている。中国の国家安全法の導入に向けて、いま世界中が中国と対立。ジャッキー・チェンなどは中国支持を表明。香港の映画界でも真っ二つに。本作は欲望と正義、善と悪、謀叛と忠誠といった単純なアクションエンターテインメントである。九龍城砦の上空を旅客機がかすめ、これを懐古趣味を含んだ娯楽作品に昇華してしまう生命力。「豪華二大俳優スターの共演」という謳い文句は、この現代の社会背景への想いを隠蔽してしまうのか、もしくは決別か諦念なのだろうか。

  • フリーライター

    藤木TDC

    監督のひとりがバリー・ウォンなので実録作品の現代的更新は期待せず、90年代の香港映画に対するような寛大さで見るべき。香港では有名な60年代の悪徳警察幹部と麻薬王の癒着から失墜までを描くが、A・ラウは過去に何度も同じ役を演じた十八番で、この人本当に悪人? と戸惑うほど悪びれず影のない芝居。彼の美貌にウットリしたい向きには不満はなかろうが。麻薬王のドニーは口髭をたくわえ片足の不自由な役、新境地の演技だがアクションは抑え目でカタルシスに不足する。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    香港二大スター共演の、悪行に手を染めた人物をモデルにした犯罪映画らしい、良い話にするか悪い話にするかの選択で、どちらにも振った揺らぎのある作品だ。でもそこが香港スター映画らしい。ドニー・イェンは当然アクションも素晴らしいが、芝居が上手いので様々な場面を「スカーフェイス」のアル・パチーノのごとく切り回す。建物の撮影の仕方がシューティングゲームの画面のようなのも目新しい。ラストのショットガンと香港の上下が入り組んだ街並みでの立ち回りには興奮した。

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