オフィシャル・シークレットの映画専門家レビュー一覧

オフィシャル・シークレット

イラク戦争開戦前、英米政府を揺るがしたキャサリン・ガン事件の映画化。英国の諜報機関GCHQで働くキャサリン・ガンは、盗聴を要請するメールに憤りを覚え、マスコミにリーク。GCHQ内部で犯人探しが始まる中、キャサリンは自ら名乗り出るが……。出演は「くるみ割り人形と秘密の王国」のキーラ・ナイトレイ、「高慢と偏見とゾンビ」のマット・スミス、「ガーンジー島の読書会の秘密」のマシュー・グード、「007 スペクター」のレイフ・ファインズ。監督は「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」のギャヴィン・フッド。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    政府職員キャサリンの「政府は変わる。私は政府ではなく国民に仕えている」という言葉。今の日本の政府と政府役人のことを想うとあまりにも胸に突き刺さる。組織に従うだけではアイヒマンと同じではないか。国と世界の平和を想う彼女の姿勢。イラク戦争を起こした米英の状況下、実在のキャサリンの起こした行動と周囲に起きた実際の出来事を、よくここまでエンタメサスペンス風に脚本を書き上げた。登場人物たちの様々な生き様。国家とは名前と顔のある個人の集合体なのだ。

  • フリーライター

    藤木TDC

    イラク戦争直前、米国が英国に依頼した謀計を国家情報部職員が内部告発する実話。背景にあるブレア首相とCIAの関係をポランスキーの「ゴースト・ライター」で予習すると理解しやすい。内容が生真面目すぎ、主人公の造形も単純で映画的旨味が小さいのが短所。この題材なら直情型ヒロインの前のめりと周囲の過剰な支援が偶然実を結びハッピーエンドと描くほうが似合う。主人公逮捕後の措置をわが国と比較すると日本司法の人権侵害がよく分かる。我々だったら確実に長期拘留だ。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    最近実話ベースで、出来も予算も中レベル程度の映画が量産されているのは、昨今の世界情勢の慌ただしさにまつわる予感と結果報告なのだろう。本作は映画内で何度も主人公が、他者から直接的なエールを送られる場面がある。まるで映画自体も、自分の主義や理想を声高に訴える中心人物に思えてくる。キーラ・ナイトレイが正義感に駆られ感情的に思想を語ったかと思えば、我に返って恐怖からメソメソし始める弱さもリアル。レイフ・ファインズの登場で映画の格調が上がる。

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