砕け散るところを見せてあげるの映画専門家レビュー一覧

砕け散るところを見せてあげる

竹宮ゆゆこの同名小説を中川大志&石井杏奈の共演で映画化した衝撃の愛の物語。高校三年生の濱田清澄は、嫌われ者の一年生・蔵本玻璃が、いじめを受けている現場を目撃。持ち前の正義感で彼女を助けたことから、2人は次第に心の距離を縮めていくが……。メガホンを取ったのは「jam」のSABU。
  • フリーライター

    須永貴子

    青春ラブストーリーとサイコスリラーのミクスチャーに成功。悪意が溢れる世界の中で、高三男子と高一女子が出会い、お互いを守るために強くなっていくが、肝となる二人の会話が、作品の中で浮いてしまっている。膨大な量の台詞を、心地良い声音で、淀みなく畳み掛ける清らかな台詞回しは、聖歌隊の歌声のよう。中川大志と石井杏奈の技術が、演出のチューニングミスにより裏目に出てしまった。とはいえ、ヴィランを演じた堤真一の芝居だけでも、料金の価値はある。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    結局そうなるんだから、早く警察に通報すれば良かったのに、と思わないでもなかった。激情に駆られた者は必ず負けてしまう。人物像がくっきりしていて、ストーリーは頑丈でまっすぐ。良き映画に欠かせない要件がきっちり満たされている。ヒーローになりたいということが戯言でないことを少年は負けることで、少女は勝つことで証明した。今を写し撮っているようでいて、やはり普遍を描いている。無残ないじめや暴力に彩られているが、見終わってすっきりした気持ちになった。

  • 映画評論家

    吉田広明

    自分のいじめ被害などの不条理な不幸をUFOのせいにして耐えていた女子が、ヒーロー志向の、これも若干痛い先輩に気づいてもらえたことを力に、戦ってもいいんだと悟る。UFOとかヒーローとかトンデモな話が実は主人公たちの切実な心情を表現し、下らなくてアイロニカルな会話もその底に真情を隠しているという逆転は確かに原作のラノベ風で、そのひねくれ具合が今どきな印象。原作有りなので仕方ないが、欲を言えば巨悪召喚による大味な解決より、学校内での人心逆転劇を見たかった。

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