ポルトガル、夏の終わりの映画専門家レビュー一覧

ポルトガル、夏の終わり

イザベル・ユペールが「人生は小説よりも奇なり」のアイラ・サックスとタッグを組んだドラマ。ポルトガルの避暑地シントラ。欧州を代表する女優フランキーは、自らの余命が長くないと知り、密かに最愛の人々の人生を演出しようと、家族や友人を呼び集める。共演は「パディントン2」のブレンダン・グリーソン、「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」のマリサ・トメイ、「2重螺旋の恋人」のジェレミー・レニエ。
  • ライター

    石村加奈

    映画の舞台となる、ポルトガルの避暑地・シントラの町が魅力的だ。主人公フランキーがあてどなく彷徨う深い森、フランキーの家族や友人たちが、まるで人生の迷子になってしまったかのように往来する、迷路のような路地、神聖なるペニーニャの山から見渡す広大な海。ゆたかな緑の中をマイペースに散策しながら、愛する人々との交流を慈しむフランキーと、リンゴの浜でフレッシュな恋にときめく孫娘マヤの、のどかな佇まいが好対照だ。シューベルトやドビュッシーのメロディも心地よく。

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    有名女優が自分の余命を伝えるために集めた家族や友人たちはそれぞれのパートナーとの問題、秘密を抱えている。役者の自由な動きを重視した全篇クローズアップのない引いた画の長回しとシントラの素晴らしい風景の俯瞰ショット。アレンの「ハンナとその姉妹」、ロメールの「海辺のポーリーヌ」などを彷彿とさせるその構造と撮影スタイルは、演技巧者たちの競演を存分に堪能させてくれる。ラストカットは、奇跡的な(計算と忍耐の賜物か)美しさで、何も語らずにすべてを集約する。

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