実りゆくの映画専門家レビュー一覧

実りゆく

存在しない映画の予告編だけを制作する第三回未完成映画予告編大賞にて堤幸彦賞・MI-CAN男優賞を獲得した「実りゆく長野」を実際に映画化。実は母の死後父と二人で農園を切り盛りする一方、週末には東京でお笑いライブに出演。彼の胸にはある思いがあった。芸能事務所タイタンでマネージャーを務めるほか、芸人のライブ映像やDVD収録用のショートフィルムを制作、社外のテレビ番組では制作ディレクターを務める八木順一朗が、「実りゆく長野」に続き監督。同作品で主演したお笑いコンビまんじゅう大帝国の竹内一希が続投する。
  • 映画評論家

    北川れい子

    素朴、純朴、かなりまっとうで等身大の成長物語ではあるけれども、お笑い芸人を目指す主人公のお笑いが、まったく笑えないのはどうなの? ふだんは父のりんご園を手伝い、週末になると東京のお笑いライブのステージに立つ主人公。メイン舞台は長野の松川町で、主産業はりんご。主人公がお笑いにこだわる理由がいささかお涙チョーダイなのはともかく、リンゴ園かお笑いかの二者択一ドラマとしての悩み方もゆるく……あ、これ二者択一ドラマではないか。にしてももっと笑いを!!

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    夢を追う息子とそれに反対する父親の諍いを軸に、全面協力を買って出てくれた松川町のローカル性を賛美しつつ、どれほどいがみ合っても家族の絆は強固なものだというこれが2020年の映画かという結末に落とし込むまでの87分。凡庸でもしかるべき抑制があれば醜悪には陥るまいが、大人も子どももギャーギャー喚くばかりでうんざり。後で知ったが、発端は存在しない映画の予告編大賞のためにつくられた予告篇らしい。結局、それ以上にアイデアが膨らまなかったということか。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    リンゴ農家とお笑い芸人。実際に両方をやっているモデルから考えた話だが、農業もお笑いもこの世での大切さ、すごくあるのだというところに踏み込んでいるかどうか。そのためには必要な、社会にはびこる悪意や劣等感への批評が足りない。前半で難破していそうな筋を八木監督はなんとか動かす。竹内一希と田中要次の、息子と父をはじめ、演技にふくらみはないが、ハマってはいるというキャスティング。ダメな永真の役に仕掛けてあったものが救い。そこに爆発的なネタが欲しかった。

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