ペイン・アンド・グローリーの映画専門家レビュー一覧

ペイン・アンド・グローリー

アントニオ・バンデラスが、第72回カンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞したペドロ・アルモドバル監督作。孤独の中に深く潜り込む映画監督サルバドール。現実と回想を行き来しながら過去の痛みとの再会を経て、もう一度生きる力を呼び覚まそうとするのだが……。共演は「誰もがそれを知っている」のペネロペ・クルス、『あなたのママになるために』のアシエル・エチェアンディア、「人生スイッチ」のレオナルド・スバラーニャ。
  • 映画評論家

    小野寺系

    世界的映画監督が、肉体の衰えや病気、心の傷にさいなまれながら、モチベーションを維持して活動を続けようとするという、アルモドバル自身の実感や課題が題材となっただろう、直截さとリアリティが素晴らしい。アントニオ・バンデラスが監督を演じ、劇中でそれをさらに役者に演じさせるという入れ子構造の狂気も興味深く、マノエル・ド・オリヴェイラ亡き後、このように大人や老いを迎えた年代の観客のためのアーティスティックな作品が、ますます貴重になっていると感じる。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    記憶と創造でつづるある映画監督の告白的人生論だ。少年時代の性の目覚め、恋人との情熱的な恋愛や仕事上の諍い、母との思い出など、歳月に熟成された記憶の時間軸を巧みに交錯させながら、新作映画の製作につなげる――。達意の表現、お馴染みに加え、達者な俳優たちの演技、そしてアルモドバルの特徴のひとつでもある色彩。特に主人公の住まいは、劇中の30余年ぶりに再会した元恋人の台詞ではないが、まるで美術館。創造の原点となった記憶を集成しつつ次なる段階へ進む作品とみた。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    どこまでがアルモドバル監督のパーソナルなのかは定かではないが、自伝的要素の強い作品と思われ、少年期のごく短い期間と映画監督としてのピークを過ぎた現在の日常が毎度おなじみアルモドバルのちょっと変な感じで描かれており、劇的なことはさほど起きないにもかかわらず主人公の人生のすべてを覗き見た感覚になる豊潤さや、これぞアルモドバルともいえる幾何学的な構図と家具や壁紙、衣装に至るまでこだわり抜くことで実現されている色彩配置の素晴らしさは相変わらずの名人芸。

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