許された子どもたちの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
ワークショップを経てキャスティングされた少年少女はみな、中学生特有の凶暴さと残酷さを体現した演技をしていて、作品が放つ生々しさに大貢献している。同級生を殺した少年が、証拠不十分で不処分になったときに見せる、隠しきれない目の輝きと口元の0・1ミリの緩みを、いったいどうやって引き出したのだろうか。挑発的でダイナミックな語り口が緊張感を保ち、扱われる問題が何一つ解決せずに終わることで、観客にバトンを渡す。作り手の使命感が伝わる骨太な力作。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
元受刑者の話だと、自分の罪を反省している受刑者など皆無。したとしても、捕まるようなヘマをしたとかの反省がほとんどらしい。この映画でもやはり仲間を殺した少年は最後まで反省しないし、親は息子を都合よく無実だと信じ続けている。その愚かさ、猛々しさをこそ見せたかったのか。なぜこの少年は仲間を殺したのか。殺した上に証拠隠滅もしている少年はなぜこんなに凶悪になったのか。親や生活環境のせいとも思えない。だから少年をどう理解していいのかわからない。
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映画評論家
吉田広明
いじめの延長で同級生を殺してしまった少年(たち)が少年審判で無罪になってしまう。彼を許してしまう制度自体を問う社会映画ではない。かつていじめられっ子だった主犯少年を擁護するあまり彼を罪に向き合わせない母、事件を餌食にするネット民や正義を振りかざして糾弾署名集めまで始める優等生生徒といった周囲に揺れ動く主犯少年の葛藤がメイン。それでも彼が自身の罪と向き合うまで見たかったし、後半のいじめられっ子少女はその契機となるはずだったのではと、惜しく思う。
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