囚われた国家の映画専門家レビュー一覧

囚われた国家

「猿の惑星:創世記」のルパート・ワイアット監督が、地球外生命体(エイリアン)による支配への抵抗を描いたSFサスペンス。エイリアンがアメリカ政府を制圧。徹底した監視体制が敷かれる中、自由を取り戻すためレジスタンス・グループは爆弾テロを企てる。統治者と呼ばれるエイリアンに忠誠を誓うシカゴ警察特捜司令官マリガン役を「10 クローバーフィールド・レーン」のジョン・グッドマンが、レジスタンスのリーダーの兄を探し続けるガブリエルを「ムーンライト」のアシュトン・サンダースが、娼館の女主人ジェーンを「死霊館」シリーズのヴェラ・ファーミガが演じる。
  • 映画評論家

    小野寺系

    SF大作映画らしい壮大な設定を用意しながら、登場人物の見える範囲でのドラマを低予算で描くという、ギャレス・エドワーズ監督の成功作「モンスターズ/地球外生命体」に近いコンセプトがあるというのは理解できるものの、思わせぶりなだけの演出はことごとく面白さに結実することはなく、撮りたいイメージに対する本作の映像が、あまりに乖離したものになっていると感じられるのがつらい。名優とはいえ、ジョン・グッドマンをスターの位置で使わざるを得ない事情も厳しい。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    米政府が、統治者と呼ぶエイリアンの傀儡となっている設定が面白い。だがその統治者の姿がほとんど見えず、せっかくの設定が生きない。結局、政府とレジスタンスとの、つまりエイリアンとの闘いに敗れた人間同士の闘いに。そんな展開のなかにあって、暗号伝達は伝書鳩、ターンテーブルに乗ったレコードから流れるナット・キング・コールの〈スターダスト〉、地下鉄駅構内の公衆電話など、’20年の今日でも見かけないアナログなアイテムを登場させたのは、アメリカの良き時代の懐古か。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    地球外生物に征服されたのちの地球を描くという基本設定はすこぶる面白く、これは宇宙人が出てこないソリッドなSFに違いない、と胸躍らせた矢先にウニみたいな造形のエイリアンが出てきて、こんな野蛮な連中が人間と和平的な外交を経て地球を統制してるってマジかよ……と世界観に懐疑を抱いてしまったのだが、それでも大作映画では見られないザラついた雰囲気と勢いがあったことは確かであり、脚本にもうひと押しの工夫があれば今までにない傑作SF映画になりえたかもしれない。

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