ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人への映画専門家レビュー一覧

ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ

    ウルグアイの元大統領ホセ・ムヒカに、日本人若手監督が迫るドキュメンタリー。2012年、国連会議で現代の消費社会を痛烈に批判し、人類にとっての幸せとは何かを問うたホセ・ムヒカ。そんな彼の生き方や言葉に触れながら、日本との知られざる関係を紐解いていく。ナレーションは「万引き家族」の安藤サクラ。
    • フリーライター

      須永貴子

      30代の日本人監督の個人的な視点からムヒカ氏の人生を捉えたことで、幼少期の氏と日本人との意外な関係性や、氏が菊を育てる理由などが盛り込まれ、他の誰にも作れないドキュメンタリーになっている。圧巻は、来日したムヒカ氏の、大学での講演シーン。メモなどは一切持たない丸腰で、学生に投げかける生の言葉が突き刺さる。彼の人生とウィットに富んだ言葉が、生き抜くための最大の武器は知性と教養であることを証明する。この暗い時代に生きるすべての日本人にとって、灯台となる一本。

    • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

      山田耕大

      先進国と言われる国の近頃の大統領や首相が揃いも揃って悪党面をしているのに引き換え、このホセ・アルベルト・ムヒカ・コルダーノのなんという顔の良さ! 町の片隅で、無類な味のパンを作る名もなきパン職人の顔のよう。「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっととほしがることである」と言うムヒカの心は限りなく豊かだ。息子に「ホセ」とまで名付ける監督の、自分の人生と重ね合わせながら、ムヒカにのめり込んでいく様が、共感を呼ぶ。

    • 映画評論家

      吉田広明

      西欧以上に西欧化することでヒロシマまで突き進んだ日本は、しかし西欧とは別の価値観をもっていたはずで、そこに日本が非西欧的な在り様のモデルたりうる契機があるとムヒカ氏は言う。その理路は理解できるが、この映画がその理路をしっかり検討しているとは到底言えない。彼に心酔し、その名にちなんで息子を名付けた程度にしか変わっていない監督自身に、発展を是とする現在の価値観を捨て自分を変えよ、とするムヒカ氏の真意がどれだけ伝わっているのか大いに疑問だ。

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