ハリエットの映画専門家レビュー一覧

ハリエット

実在の奴隷解放運動家ハリエット・タブマンの激動の人生を活写するヒューマンドラマ。1849年アメリカ。ブローダス農場の奴隷ミンティは、幼い頃から過酷な労働を強いられていた。ある日、ミンティは借金の肩代わりに売りに出されそうになり、脱走を決意する。出演は、本作で第92回アカデミー賞主演女優賞にノミネートされたシンシア・エリヴォ、「オリエント急行殺人事件」のレスリー・オドム・Jr、「ドリーム」のジャネール・モネイ。監督は『クリスマスの贈り物』のケイシー・レモンズ。
  • ライター

    石村加奈

    虐待で頭を負傷して以来、神の声が聞こえるようになったハリエット。その声に導かれて、数々の危険を回避し、多くの奴隷を解放した彼女は、ただ「ラッキー」だったのではない。肌身で知る奴隷制への恐怖が、闘争の原動力となったはずだが、後遺症に苦しむ姿と、神の声に集中する神聖な姿を混同した構成には些か困惑。神懸かりではなく、相手の弱さを一喝する目力や意志のある歌声、物語に呑み込まれない、C・エリヴォの存在感を生かした方が、英雄の映画としては、説得力があったのでは?

  • 映像ディレクター/映画監督

    佐々木誠

    冒頭、黒人奴隷のミンティは、弁護士に依頼し自分と家族たちの権利の証明を手に入れ、奴隷主に自由を訴える。その行動から、夫や父親は「自由黒人」で別の雇い主の家に住んでいる、など主と奴隷の複雑で計算された主従関係が見えてくる。彼女は逃亡し奴隷解放運動家となるのだが、その強靭な意志、常に「死か自由か」の2択を念頭に置いた行動が全篇を貫く。実際に虐待が原因でナルコレプシーだった彼女のそれを、予知夢が未来を導くという設定にしたのが秀逸。

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