燕 Yanの映画専門家レビュー一覧
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フリーライター
須永貴子
映画、CM、MVなど、広いテリトリーで活躍する、撮影技師の監督デビュー作。テーマやストーリー、人物が抱える葛藤などはオーソドックスだが、ほどよくスタイリッシュな衣裳や画作りにより、退屈を回避。過不足のない情報を伝えつつ、日本と台湾、回想シーンと現在とで、それぞれのトーンをさりげなく使い分ける映像表現も巧み。台湾・高雄で撮影したパートは、初めてその地を訪れた主人公と一緒に、未知の土地に迷い込む感覚が味わえる、魅力的な“異邦人もの”に仕上がっている。
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脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
「いい映画だろう?」と言われたら、「うん。そうだね」と答えると思う。が、血は湧き立たないし、脈拍も跳ね上がらない。ドラマを粒だてるお膳立ては出来ている。いや、出来すぎている。この設定で感動しないのは、しないほうがおかしいとばかりに言われている感じがして、天邪鬼な僕は反感を覚えてしまう。なぜ母は「僕」を置いて台湾に逃げたのか。それがよくわからない。母が「僕」に何か書こうとして何も書けず、白紙のまま封書にされた手紙を台湾に来た「僕」が手にするのだが……。
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映画評論家
吉田広明
言葉が違う、弁当が周りと違うと周囲の差別的な目を内面化し、台湾人の母を拒絶していた主人公が、離婚によって母と兄と離れ離れになって、捨てられたと思い込むというのは矛盾、というか身勝手ではと思うが、それはそれで、その矛盾に満ちた葛藤をがっつり描くべきであって、そうした方向に大胆に踏み出していない。そのくせ主人公の心理的混乱を表現するのに細かいカットをやたら積み重ねたりする小手先の技術で画面を埋めようとしていて、努力の方向性が違うのでは、と思う。
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