ジョゼと虎と魚たち(2020:アニメ)の映画専門家レビュー一覧

ジョゼと虎と魚たち(2020:アニメ)

芥川賞作家・田辺聖子の同名小説をアニメ化。幼いころから車椅子生活で、絵と本と想像の中で生きているジョゼは、坂道で転げ落ちそうになったところを大学生の恒夫に助けられる。ジョゼと同居する祖母・チヅは、恒夫にジョゼの相手をするバイトを持ち掛ける。声の出演は、「虹色デイズ」の中川大志、「デイアンドナイト」の清原果耶。監督は、TVアニメ『ノラガミ』シリーズのタムラコータロー。
  • 映画評論家

    北川れい子

    先行した実写版より今回のアニメ版の方が素直に楽しめたのは、車椅子娘のジョゼが、絵や動き、台詞などから“純化”というか、かなり抽象化しているからだろう。実写版ではどうしてもリアルな存在として演出にも限界があるが、その点、アニメは飛ぶのも遊ぶのも自由自在。ジョゼが読書家で絵を描くのが趣味というのも表現の広がりとなり、そういう意味ではアニメ向きの原作なのかも。各キャラクターの造形や背景描写も丁寧で好ましく、それぞれの思いが台詞以外からも透けて見える。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    原作小説は田辺聖子ならではの一歩引いた人間洞察にひねくれた面白味があり、犬童一心監督、渡辺あや脚本の実写映画はそれとはまた違うタイプの厳しさを根底にしのばせる作品になっていた。この映画はむしろ近年の青春アニメ路線に親和性をもたせたつくりで、その意味ではもっともわかりやすいが、一方で非共感的であることに支えられたファンタジーの奥行きは失われてしまっている。意図されたであろう背景と人物が極端に乖離した作画も、あまり効果的とは思えない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    田辺聖子の原作は一九八四年、渡辺あや脚本で犬童一心監督の実写版ヒット作は二〇〇三年。時間の経過は、足の不自由なジョゼの外出を祖母が制限するという設定を突きくずしたと思う。脚本の桑村さや香とタムラ監督、雑な仕事ではないと思うが、まず、その対処を考えていないのが弱い。次に、ジョゼの出会う恒夫の作り方。メキシコ行きの夢、事故、立ち直り、そして気づきという展開には、いつの話だと呆れた。一方、現実感を犠牲にしても、というファンタジー的楽しさも、遠慮気味。

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