老後の資金がありません!の映画専門家レビュー一覧

老後の資金がありません!

垣谷美雨によるベストセラー小説を原作に、天海祐希が「狗神」以来、19年ぶりの単独主演を果たしたコメディ。コツコツと老後の資金を貯めてきた平凡な主婦・篤子。だが舅の葬式、娘の派手婚、さらには夫婦そろって失職し資産は激減。篤子は窮地に立たされる。監督は「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の前田哲。
  • 脚本家、映画監督

    井上淳一

    正直に書きます。退屈でした。類型的で陳腐で何の魅力もないキャラとストーリー。老後の資金がないという恐怖は家庭内から出ることなく、ついぞ社会を射程に入れることはない。結論の「我儘に生きろ」も結局はお金がなければ出来ないこと。社会問題の最前線をやりながら、現実は描かない。コメディは免罪符ではないはず。問題の本質を避けるから映画の資金が集まるのか。テレビで出来る話を映画でやらないで。こうやって毒にも薬にもならない映画とそれを撮る監督だけが増えていく。

  • 日本経済新聞編集委員

    古賀重樹

    来月で定年を迎える筆者にとっては切実なタイトルでちょっと期待していたのだが、がっくり。この映画に出てくる人たちはちっとも困っていない。中産階級の没落という深刻な問題から、しれっと目をそらしている。そんな心配より目の前の人を大切にしなさいというのは、厳しい現実をやり過ごすにはいいのだろうが、麻薬みたいな思想だ。為政者にとって都合がいい愚民政策の極みではないか。そんな生ぬるい雰囲気に風穴をあける草笛光子の荒唐無稽な怪演に星一つおまけ。

  • 映画評論家

    服部香穂里

    生きるにも死ぬにも何かとかかる金に振り回される人びとを、厄介な見栄やプライド、嫉妬も絡め、温かなまなざしで見守る。ただでさえ多彩かつ芸達者な面々がバトルを繰り広げるうえに、スローモーションやボウリングのイメージショットなども多用され、コメディとしては少々過剰で上滑り気味にも映るのが難。とはいえ、いい意味で生活苦の見えない天海祐希の?剌さ、さらなる引き出しを披露する草笛光子(=老後の希望の星)を敬愛する現場の団結力も相まって、観賞後感は爽快。

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