子どもたちをよろしくの映画専門家レビュー一覧

子どもたちをよろしく

中学生のいじめと自殺、その裏にある家庭の問題を描く人間ドラマ。デリヘルで働く優樹菜は、実の母親と義父、義父の連れ子で中学二年生の稔と暮らしている。義父は酒に酔うと、母と稔に暴力を振るい、優樹菜には性暴力を繰り返すが、母は見て見ぬふりだった。監督・脚本は、「ワルボロ」の隅田靖。出演は、「愛なき森で叫べ」の鎌滝えり、「長いお別れ」の杉田雷麟、本作がデビュー作となる椿三期、「天然☆生活」の川瀬陽太、「母を亡くした時、僕は遺骨を食べたいと思った。」の村上淳、「いぬむこいり」の有森也実。
  • 映画評論家

    川口敦子

    いじめ、自殺、家庭崩壊。中学生をめぐる問題を現場で吸い上げ発せられるメッセージが胸に刺さる。子どもたち以上に深刻な大人たちの問題。皮相的報道の問題(終幕の父の会見、一見、同情を呼ぶ存在の実相を映画は指し示す)。主題のそうした奥行を?みしめた上で、異母姉弟が動物園でつかう弁当の一景、その姉の身の振り方、どぶ川での一悶着を切りとる縦の構図等々、“普通の映画”としての見せ方、物語り方にも魅了された。蛇足ながら特別協力澤井信一郎監督の新作も待望する。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    このような題材を扱った映画は必要であり、作り手たちの本気を疑うつもりもない。が、観ていてどうしても引っかかる。この残酷な現実、救いのなさをドラマに仕立てる際に、それを字義通りの残酷さ、救いのなさとして表現する手つきは、はたして当事者的な問答に根ざしたものだろうか。それはこの映画を「社会の闇」を描いた作品とする打ち出し方からも感じる疑問である。まず自分自身が他人事にしないという前提に立った場合、現時点で、僕は、この映画を評価することができない。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    痛ましい二家族の話。始まって早々、ケン・ローチなら、あるいは城定秀夫なら、どうやるかと思ったりした。しかし中盤以降、引き込まれた。隅田監督と鍋島カメラマン。監督がうまく、撮影がよく、役者ががんばって、作品全体が歯を食いしばっているという感じに。川瀬、村上、有森は、文字通り「見ていたくない」部類の弱い大人。子の側の鎌滝、杉田、椿は、いざというとき、いい顔をして、いい声を出す。これほどやれるなら、真に対決すべきものへと思考を展開してほしかった。

1 - 3件表示/全3件