サイレント・トーキョーの映画専門家レビュー一覧

サイレント・トーキョー

秦建日子による小説『サイレント・トーキョー And so this is Xmas』を「SP」シリーズの波多野貴文監督が映画化。クリスマス・イブの東京で突如発生した連続爆破テロ事件と、事件に巻き込まれていく政府・警察・マスコミ・市民の様々な思惑が交錯するサスペンス。出演は「Fukushima 50」の佐藤浩市、「マチネの終わりに」の石田ゆり子、「空母いぶき」の西島秀俊。
  • フリーライター

    須永貴子

    豪華キャストに、渋谷駅前の爆破シーン、“トーキョー”を代表するロケーションなど、企画書に羅列されたセールスポイントの映像化で終わってしまった。現代日本を舞台に、反戦のメッセージを込めた、エンタメ大作を作ろうという心意気が伝わるだけに残念。特に人物描写は、肩書きや役割、目的を背負わされているだけで、映像や台詞にない部分の背景や想いが抜け落ちているため、スリルもラストのカタルシスもない。尺を伸ばしてでも、キャラクターの肉付けをすべきだった。

  • 脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授

    山田耕大

    始まってすぐ真犯人がわかってしまう。だからいくらレッドへリングを施しても無駄である。それにしても渋谷で大爆発が起きたのに、その報道シーンで死者・負傷者数すら出さないのは、どういう忖度なのか。よもや、真犯人が「本当はいい人だ」というイメージを損なう危惧があって、出さないのではあるまいか。もしそうなら、それこそ身震いがするほどのホラーだ。日本映画が死んでいく。テロリストになった経緯は説得力ゼロ。心優しき空気読みの日本人には、こういう映画は無理なのだ。

  • 映画評論家

    吉田広明

    戦争できる国にするという首相に対し、これは戦争だと国民を人質にテロを仕掛けるわけだが、その動機が結局公表されないのでは、犯人の思想を首相や国民に問う切実さが欠け、ただの大量殺人になってしまう。そもそもPKOで地雷除去の記憶が動機では戦争一般の悲惨であり、日本人にとっての戦争を問うことにはならないのでは。犯人の仕掛けが次々、とアイデアの積み上げで進めていくべきところ、渋谷でのテロ描写にカロリーが使われ、ヤマが一つだけでは関心も持続しない。

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