ファンファーレが鳴り響くの映画専門家レビュー一覧

ファンファーレが鳴り響く

2019年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを受賞した青春ホラー。吃音症でいじめられている高校1年生の明彦は、同級生の才色兼備の女子生徒・光莉が猫を殺すのを目撃する。殺人欲求がある光莉は、明彦にイジメグループの殺害を提案する。出演は、「花と雨」の笠松将、「左様なら」の祷キララ。監督は、新鋭・森田和樹。
  • 映画評論家

    北川れい子

    おやおや、腹いせで青春殺人道中記ですか。森田作品は短篇も“ゆうばり”でグランプリ他を受賞したという前作も未見なので、闘病中の自分の欲と想念を描いたという本作のみのカンソーだが、いじめられっ子が血に魅せられた少女に引きずられての殺しの道行き、ファンファーレどころか雑音さえ響かない。殺しのシーンの演出ばかりに力を入れているのもただ味けなく稚拙。監督は「俺たちに明日はない」「冷たい熱帯魚」に思い入れがあるようだが、場面はあってもドラマは皆無。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    笠松将と祷キララ、いい顔をしている。そのたたずまいを生かせば、「馬鹿な大人」に対する二人の逃避行にニューシネマ的なリリカルさが宿りそうだが、なにやら紋切り型の破壊衝動とダイアローグの貧しさがむしろ役者の個性を殺いでいる。残酷描写もただ気前よくやってますというだけで生理的な嫌悪感に欠け、それではこの物語を語る意味がないのでは。たとえば90年代における松村克弥の「オールナイトロング」、あのヒリヒリとした時代の切迫感のその先を見せてほしい。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    学校にはイジメ集団と勇気のない教師、家には思慮なく叱る父とやさしいだけの母。働かない叔父がいて味方してくれるが、頼りにはならない。そんな環境で追いつめられる吃音の高校生を笠松将が演じる。だれにともなく「死ね!」と彼が叫ぶのを聞きのがさず、悪夢的な殺戮の連続へと彼を引き込む同級生の女子に祷キララ。ボニーとクライドになりそこなう二人。森田監督、暴走とその後も描いて何を確かめたのだろう。画も演技も上滑り。「バカな大人」に立ちむかうにはナイフが小さい。

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