のぼる小寺さんの映画専門家レビュー一覧
-
フリーライター
須永貴子
ボルダリングで真っ直ぐ上だけを見つめる小寺さんに、進路希望用紙が白紙だった4人が熱い視線を注ぎ、4人がそれぞれに変化する関係が、アイドル(推し)とファンのそれに重なった。頑張っている推しに影響されて、自分も何かを頑張ることで成長し、同じ推しを持つファン同士が繋がり、世界が広がる尊い関係。アイドル性だけでなく、アスリート的な身体能力と哲学者のような探究心を併せ持つ小寺さん像に到達できたのは、元モー娘。の工藤遥の資質があればこそ。漫画の幸福な実写化。
-
脚本家、プロデューサー、大阪芸術大学教授
山田耕大
この映画を「爽やか」と形容すると、失礼な気がする。観終わって襟元を正したくなった。コロナ禍のなかで観たからそんな気がしたのか、小寺さんや近藤君の流す汗粒が、真珠のような気品のある渋い光沢を放っているのではないかと思った。小寺さんはボルダリングのウォールをひたすら登る。わざとらしい気負いは何もなく、凜としていて美しい。近藤君は彼女に恋をし、影響されて卓球にのめり込む。人が等身大であることの心地よい充足感がここにある。
-
映画評論家
吉田広明
無我夢中でボルダリングに励む女子、自分の好きなことに真っすぐな彼女に惹かれて、周囲が次第に感化されてゆく。自分が何をしたらいいか分からない、他人の目が気になって好きなことを好きと言えない等、周囲の生徒たち(そのキャラも多様で飽きない)の思春期の不定形な心理をうまく掬い上げている。主人公男子が頑張り始めると、それまで一緒にダラダラ過ごしていた仲間がちょっと距離置いたりする辺りの微細な葛藤も面白いが、あまり展開されていないのが少し残念だ。
1 -
3件表示/全3件