エスケープ・ルーム(2019)の映画専門家レビュー一覧

エスケープ・ルーム(2019)

「ワイルド・スピード」シリーズのプロデューサー、ニール・H・モリッツが手掛けたシチュエーションスリラー。あるオフィスビルに集められた賞金1万ドルを賭けた体験型脱出ゲームの参加者6人が、様々なトラップが仕掛けられた死のゲームに挑んでいく。出演は『ロスト・イン・スペース』のテイラー・ラッセル、「僕のワンダフル・ライフ」のローガン・ミラー。監督は「インシディアス 最後の鍵」のアダム・ロデヒル。
  • 映画評論家

    小野寺系

    映画としては、よくある“デスゲーム”ものの一種で、突出した特長はないが、ジャンル映画の枠のなかで丁寧に作られ、最後まで飽きさせない。ゲームジャンルとしての「脱出ゲーム」は、部屋全体を調べたり、暗号を解くため数字や記号とにらめっこしたりと、作業感が強くストレスがたまりやすいが、映画では全部出演者がやってくれてカタルシスも得られるので、とても楽! 部屋が主役なので、美術スタッフがここまで重要になる映画は珍しい。続篇もあるようなので楽しみだ。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    出だしは暗号を解き明かし、鍵を探して脱出を試みるゲーム攻略の頭脳派ムービーだが、第2、第3と部屋を移るにしたがい、ビジュアルと体力で見せるサバイバル・アクションに。ゲーム映画にビジュアルの仕掛けは必須とは承知しているが、最後まで体力勝負だったのは、いささかストレート過ぎてスリル感に欠け、食い足りない。それにつけても感謝祭の休暇をこのゲームに参加して過ごさなくても。こう思うと身も蓋もないが、この種の頭の中で考えた仕掛けで押しまくる映画は苦手なので。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    冒頭の量子力学の講義に高度な知的パズル映画の幕開けを期待してしまうと、その後のスマホアプリレベルのゲーム内容にズッコケてしまうのだが、アクションに重きを置いたテキパキした演出と分かりやすい展開にはこの手の映画に付き纏いがちな小難しい哲学は内包されていない上、バッチリ真相が分かる無邪気なオチや、大衆向けに抑制された残酷描写などもポップコーンムービーとしては間違っておらず、盛りだくさんなツッコミどころもデート後の映画談議に花を添えるゴキゲン要素だ。

  • 映画評論家

    小野寺系

    フィンランドの著名監督クラウス・ハロ、主演のベテラン俳優ヘイッキ・ノウシアイネン、ともに堅実な仕事が光る。市井の人が金策に奔走する作品は、面白く味があることが多いが、本作も例外ではない。端正な撮影で落ち着いた色彩の画面が好ましく、絵画の奥深さを孫に伝えようと美術館にやってくる場面や、人生最後の賭けのために、オークションで大勝負する場面が胸に迫る。脚本家が美術に理解があるところも評価できるが、あまりに型どおりに進みすぎるところは難点。

  • 映画評論家

    きさらぎ尚

    絵画など、とりわけアート作品に魅せられた人間の心の内は、主人公の娘がそうであるように、周囲の凡人には理解しにくいところがある。この映画はこの点、つまり運命的に出会った絵画に人生をかけた画商と、家族の問題とをドラマにして、上手に決着させるところが好ましい。加えて、問題の肖像画(イコン)に画家の署名がない理由も知ることができる(恥ずかしながらこの映画を見るまで知らなかった)。つまるところ監督のクラウス・ハロは芸術と娯楽を融合させる手腕にたけている。

  • 映画監督、脚本家

    城定秀夫

    頑固ジジイと生意気ボウズに芽生える友情には萌えるし、回転椅子を使ったさり気ない死の表現をはじめとした細かい演出にも感心させられたのだが、一番の盛り上がりを期待したオークションシーンが中盤で思いのほかあっさり処理されてしまう物語構成には首を傾げてしまうし、以降続く金策に奔走したりの地味で生臭い展開には、金儲けより仕事人としての矜持を貫かんとしている主人公に寄り添うことを放棄しているどころか、むしろマイナス方向に牽引しているような気まずさを感じた。

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