1917 命をかけた伝令の映画専門家レビュー一覧

1917 命をかけた伝令

サム・メンデスが驚異の全編ワンカット撮影で挑んだ戦争ドラマ。第一次世界大戦。最前線にいる1600人の仲間の命を救うため、一刻も早く重要な伝令を届けよとの命令を受けた英軍兵士スコフィールドとブレイクは、数々の危険が待つ戦場へと飛び出していく。出演は「マロ―ボーン家の掟」のジョージ・マッケイ、「ブレス しあわせの呼吸」のディーン=チャールズ・チャップマン、「メリー・ポピンズ リターンズ」のコリン・ファース、「アベンジャーズ/エンドゲーム」のベネディクト・カンバーバッチ。驚異的な撮影を実現した撮影監督は、「ブレードランナー2049」のロジャー・ディーキンス。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    宣伝では全篇ワンカット押し。見る前はどうでも良いことに思われたが、そこが肝だった。それが引き起こすふたつのリアル。全くもってどうやって撮影したのか驚異的テクニカルな点。それから「戦争」を大きな国家間の争いではなく、微細でそれぞれ個人の体験として描くという点だ。前者は臨場感というリアル。後者は歴史を有名人の所有物から換骨奪回する経験のリアル。どちらも「戦争」をリアルに描くことの意味に到達するのが、それらは「生」を最もリアルに描くことだった。

  • フリーライター

    藤木TDC

    無線機の普及がない第一次世界大戦の戦場。緊急命令を最前線へ届ける若い兵士の行動を銃弾・爆弾飛び交う戦地疑似体験アトラクションの趣向でワンシーン・ワンカット風にカメラが追う。しかし暗転や人物のフレームアウトが多く映像のつなぎ目がわかる編集は期待はずれ。対岸に狙撃兵がいそうな川で橋の欄干を平均台歩き、小隊が歩哨も立てず音楽鑑賞、歩兵突撃中の最前線を脱走兵もどきに逆走など戦争映画にそぐわぬ描写も不満、悪臭が伝わってこない塹壕の美術も物足りない。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    監督のS・メンデスはもちろん、撮影R・ディーキンス渾身の作。移動を中心とし、マジックのように仕掛けが施された長回しはやはり前のめりで観てしまう。次々と展開するシークエンスの中に織り込まれた緊張と緩和の、不規則な連続も主人公一人の地味さを十分に補強する。青年の運命の一日を表現する、ナイトシーンの目を奪う鮮烈な照明の輝きと明け方の空の色、川の激流に飲み込まれる苛烈さは、技術と計算された趣向の賜物だ。英国俳優陣の顔見世も豪華さを添える。

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