お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方の映画専門家レビュー一覧

お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方

熟年夫婦の終活にまつわる騒動を明るく描いたドラマ。結婚五十年になる大原夫妻は、夫・真一が家にずっといることで妻・千賀子が夫在宅ストレス症に陥り、熟年離婚寸前に。千賀子は娘・亜矢から勧められ終活フェアに行き、前向きに今後のことを考えるが……。出演は、BOYS AND MENの水野勝、「すばらしき世界」の橋爪功、「山中静夫氏の尊厳死」の高畑淳子、「L・DK」の剛力彩芽、「臨場 劇場版」の松下由樹。監督・脚本は、「新 デコトラのシュウ 鷲」の香月秀之。
  • 映画評論家

    北川れい子

    世間の終活ブームに便乗したような特定の観客層狙いのコメディだが、何とか間口を広げるために若い世代の話を盛り込んだ努力は買う。けれども生活にゆとりのある熟年夫婦の他愛ない口喧嘩を発端にした離婚騒動は実にパターン通りで、本気で観る気になれず、映画というより流してみるドラマ並。橋爪功の頑固おやじ演技も「家族はつらいよ」シリーズのまんま。高畑淳子の強気の妻もにぎやかなだけで、別れる気があるんだか。葬儀社のベテラン社員(松下由樹)の言動には唯一関心。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    「(人生の)長さの意味に気づいているひとは少ない」と語りかける冒頭のナレーションに、正しい終活を教えて差し上げますよ、という啓蒙色がにじみ出ていてイラッとする。生活感のないモデルルームのような空間、絵に描いたような熟年像、再現VTRのような演技、とBS放送の合間に流れるハウトゥ番組ノリでダラダラとつづく2時間。駄目押しにチューリップの楽曲をバックにした(橋爪功は世代的におかしくないか)懐古映像が流れ、退屈な法事に付き合わされた気分になった。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    夫の定年後。男女異質論。いまの日本の「多数派」の姿。これが勉強になる人もいるだろうと書けば、おまえこそ学べと突っ込まれそうだが、「熟春」という言葉をはじめ、反発したいところだらけ。最後の金婚式、橋爪功と高畑淳子の夫婦に贈られる金のオシドリは、とくに耐えがたい。良心的な葬儀社はあっていいし、それが葬式以前のサービスに力を注ぐのは当然としても、その宣伝となる以上の内容がどれだけあるか。香月監督たち、こういう終点に到れない人たちのことも考えるべきでは。

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