奥様は、取り扱い注意の映画専門家レビュー一覧

奥様は、取り扱い注意

2017年に放送されたドラマ『奥様は、取扱注意』の劇場版。元特殊工作員の専業主婦・菜美と、菜美の夫で、実は彼女を監視する公安警察の勇輝。ある出来事がきっかけで菜美が記憶喪失になると、二人は名前を変え、地方都市・珠海市で新生活を始めるが……。出演は、「今夜、ロマンス劇場で」の綾瀬はるか、「空母いぶき」の西島秀俊。監督は、「カイジ ファイナルゲーム」の佐藤東弥。
  • 映画評論家

    北川れい子

    でっかいウソにはリアルなディテールを――。娯楽アクションの鉄則だが、この映画、ドラマシリーズを知らない人はあっち行って、と言わんばかりの導入部といい、記憶喪失という便利な逃げ道といい、企業誘致を巡る陰謀話といい、どれもこれも嘘の厚塗りにしか見えず、頭からシッポまで、シラジラしい。主人公夫婦の設定も、ブラピとA・ジョリー主演「Mr.&Mrs.スミス」の二番煎じ。ロケセットにけっこう金をかけアクションにも力を入れているが、作りの派手さより問題はハナシの中身。

  • 編集者、ライター

    佐野亨

    中央アジア(というテロップもどうだろう)を舞台にした冒頭の「夢」シークエンスからして恐ろしく類型的で嫌な予感がただようが、夫婦像にせよ環境問題の扱いにせよ外国人の描写にせよ、すべてが広告代理店的なイメージの領域にとどまる、どころか、それらのもつ抑圧的・排他的な性質になんら批判を加えることなく「面白げ」にあるいは「感動的」に差し出してみせる手つきは不快きわまりない。80年代ハリウッド映画を100倍希釈したようなアクションシーンもダラダラと退屈。

  • 詩人、映画監督

    福間健二

    テレビから映画へ。タイトルの楽しさに、綾瀬はるかの魅力とガンバリ。成算ありとした企画会議の期待を裏切らない仕事だとは思うが、アクション場面が弱い。装置的に半端なものを、慌てたように入る音楽がさらに大味にする。佐藤監督、ラストの仕掛けに自信をもちすぎたろうか。新エネルギー源開発で揺れる地方の町が舞台。後戻りできない計画と裏組織が人々の暮らしをおびやかす。善意の人もいて、ロシアと「公安」が絡み、個人的に動く諜報員もいる。出番がないのは痛快さか。

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