テッド・バンディ(2019)の映画専門家レビュー一覧

テッド・バンディ(2019)

「グレイテスト・ショーマン」のザック・エフロンが、アメリカ史上最も凶悪といわれた殺人犯を演じる犯罪ドラマ。30人以上を殺害、IQ160の頭脳と美しい容姿で司法・メディアを翻弄したテッド・バンディ。しかし、一人殺されなかった女だけが知る真実があった。共演は「あと1センチの恋」のリリー・コリンズ、「メイズ・ランナー」シリーズのカヤ・スコデラーリオ、「ボーダー・ライン」シリーズのジェフリー・ドノヴァン、「RED レッド」シリーズのジョン・マルコヴィッチ。監督は「クルード アマゾンの原油流出パニック」のジョー・バリンジャー。
  • 非建築家、美術家、映画評論、ドラァグクイーン、アーティスト

    ヴィヴィアン佐藤

    1970年代アメリカで最も有名な殺人鬼になった理由とは、頭脳明晰で容姿端麗なバンディの裁判の様子が異例的にテレビ中継され、全米に知れ渡ったためだ。いわゆる劇場型。日本の金嬉老事件や浅間山荘事件も前後同時期。テレビの一般普及とそのマスイメージの形成は、視聴者にも当の犯罪者自身にも影響を及ぼす。特にカメラの前だと自分は完全に無実だということを演じてしまう虚像性。バンディとは優れた映像役者然の素質と才能を持ち、殺人の快楽から映像の快楽に溺没した。

  • フリーライター

    藤木TDC

    レクター博士や「ダークナイト」ジョーカーの原形であるシリアルキラーの犯行再現を期待する人には向かない内容。映画は無罪説をベースに進行、残酷シーンはほぼない。とはいえバンディ善人論を強調するでもなく、彼に愛された二人の女性の感情に比重をかけたり、ドラマのベクトルが錯綜気味。バンディの軌跡は極端にダイジェストされ、同監督のネットフリックスドキュメント全4回を見ておかないと難解な場面も。配信を待って全部まとめて一気見が正解。本作だけでは不完全。

  • 映画評論家

    真魚八重子

    T・バンディのどの時間を切り取り、どの側面に光を当てるかの取捨が顕著で、ある意味特異な作品だ。残酷な画は一瞬に絞り込まれ、映画は他人の心理操作を得意としたバンディが、思い通りに出来なかった「愛する女性」と「裁判」が大部分を占める。本作はバリンジャー監督がネットフリックスで撮った、バンディのドキュメンタリーを補足するメロドラマである。バンディのスマートさはわかるが、彼の野蛮な残虐さと愛嬌との落差こそが個性なので、異常な面の描写が少々物足りない。

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